クリシュナムルティの著作を読んでいると、ありふれた目の前の現実が、たとえようもなく美しく透き通った詩的な世界に変わっていく。しかし決して甘美な世界ではなく、そこに張りつめた厳しさと緊張感が存在する。読んでいるだけで心が静謐になっていく。結局クリシュナムルティとは、その存在そのもので完結していたのではないかと思う。人はその存在や彼の著作に触れるだけですでにして癒されているのであり、それ以上でもそれ以下でもないように思う。
この日記が78歳のお爺ちゃんによって書かれていると思うと不思議な気持ちになります。自然描写や観察の内容がシンプルな言葉で力強く、クリアで、透明なエネルギーに満ち溢れていると思うからです。覚者と呼ばれる人も晩年になると枯れる人が多いと思うのですが、この人は枯れてないと思います。けれどあまり言葉に酔わず、彼を特別な人にしてしまわずに、「実際の観察」を通してまたフィードバックして味わうというかたちで読めたらと思います。
クリシュナムルティの本はいろいろ読みました。全部おすすめなのですが、ぼくにとっては、この一冊がいちばんよかったです。<BR>やはり宮内さんの訳がとても良くて、すうっと心にしみわたる感じがいいです。<P>この本とは、もうかれこれ20年ちかくつきあっています。こころ洗われるような、美しい本です。好きなフレーズがいっぱいあります。どのような境遇のときにも、どのような精神状態のときにも、どんなひとにも、こころにすっと美しい風が吹いてくるような、そんな本です。<BR>たぶん、一生をともにできる数すくない本だとおもいます。