もしあなたがシナリオライターになりたい。あるいは小説を書いてみたいと考えるならこの本はぜひお薦め。ハリウッドで活躍している脚本家がノウハウを教えてくれる書だ。確かに翻訳はへたっぴい。学校の授業のようなナサケナイ翻訳だが、それだけで本書に目を通さずに通り過ぎるのは賢明でない。本気で脚本を書きたいと思っているあなた、あるいは淀川長治氏のように映画の造詣を深めたいと思っているあなたはぜひ一読を。
読みにくいのを我慢して読んでいたら、心理学者マスローのhierarchy of needsを「基本的な必要性の等級」と訳してあり、たまげた。これはふつう「欲求階層」もしくは「欲求段階」と訳される。どちらがわかりやすいか一目瞭然。さらに致命的なことには、physiological needsを「心理的必要性」と訳してあり、これには心臓が止まった。よく見てもらいたい。psychologicalじゃない。physiologicalだ。「生理的欲求」と訳すべき。まったく正反対の意味になってしまっている。だいたい「食物、水、空気」と書いてあるのに、どこが「心理的」なのだ。よく知らないんだったら、心理学の本くらい開けよ、と言いたくなる。こんな調子の訳なので、気をつけてください。訳の悪さを度外視すれば、読む価値はあります。(原書にはあたってませんが、マスローの用語なので、おそらく上記の英語が使われていると思います)
「観客を満足させるためにどうやって脚本を書いたらいいのか」という視点に立った脚本術書。障害の設定や登場人物の配置など基本的な事が書かれています。なかなか良かったです。