本書「エンパワーメント・コミュニケーション」に関してはさまざまな評価が分かれると思う。評者自身、岸先生の講座に参加している身でありながら、講座というパワーというか、ライブ性としてみると多少の物足りなさを感じる。<P>ヴィトゲンシュタインに抵抗している訳ではないが、それこそ「ほんとに重要なことは言葉として語られない」のである。<P>しかし、本書を通底した、コミュニケーションの深いセンスを垣間見た読者は、本書の内容を吟味し、検討し、そして、使ってみて、最後に掴んでみながら本書の内容を理解できるようになると、どれだけ本書に出てくる内容が「役に立ち」「実践的である」かどうかを掴めることと思う。<P>良書は、内容を理解し、使ってみて、使ってから内容が深い意味が理解できるという3度おいしいという構造を持っている。<P>本書は発売からまだそれほど時間がたっていないが、この分野における唯一の古典=バイブルとして認知される日もそう遠い時ではないであろう。
部下とのコミュニケーションを課題としている人にとって良い参考書だと思う。大半がどこかで聞いたことがある内容だが平易な文書で大変読みやすい本だと思う。しかし、第4章「できない」を「できる」に変えるコミュニケーション部分は「ポジティブになりたがるネガティブな人々」とか「健全に絶望」するとか、「計画でもやる気でも人は動かない」「反省はするな反省は役に立たない」のような、「おやっ」と思われる著者の主張がとてもおもしろい。著者への共感と反論を考える機会も与えてくれます。