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普段着の住宅術 ( 中村 好文 )

この本を本屋さんでパラパラとめくっていたら、詩人の立原道造の設計した小住宅「ヒヤシンスハウス」のラフな設計図がしっかり載っていたのです。詩人であった立原道造は、同時に、大学の建築科を出て将来を嘱望されていた建築家でもありました。ヒヤシンスハウスというのは、彼が書斎兼寝室として設計した小住宅です。当時結婚を考えていた水戸部アサイという女性との新居にという計画もあったようです。私はこの住宅を部分的な小さな模型でしか見たことはなかったのですが、この本で、ようやく、その全体像を見ることができました。私は、好きな建物の空間の中にいるのと同じくらいに、もしかしたら、それ以上に、設計図を見ながら、その空間の居心地を想像してみたりするのが好きです。<P>「ヒヤシンス!ウス」は、とても端正です。どのように端正かという、小津安二郎の映画のように端正です。この約4.4坪の小さな建物の中にあの時代の美しい日本語が聞こえてくるような感じなのです。

住宅設計で有名な著者が折にふれ、様々な雑誌等に発表したエッセイ等をまとめた本です。この本を読むと、著者の設計スタンス、即ち「奇抜さや新奇さを求めるのではなく、そこに住む人の生活や周囲の環境に合った設計(=普通に見えるんだけれども、きちんと仕立てられている腕の良い仕立屋の服のイメージ)をする」ということがわかるとともに、共感を覚えました。また、いつもながらの、著者の飾らない性格が出た文章、暖かみのあるスケッチも心地よく、読後、ほんわかした気分になれる1冊です。<BR>著者の設計スタンスがわかるという意味でも、これから「住宅巡礼」シリーズ<BR>等の著作を読もうと考えている方には、是非、こちらから読まれることをお奨めしたい本です。

中村好文さんの飾らない、素朴で温かい人柄が建築に対する考えを通してよく伝わりました。小津安二郎、黒澤明の映画や文学などに登場する住宅を引用して分かりやすく説明してあり最後まで面白く読めました。<P>私たち一般人の身の丈に合った住宅を建てることを考えると、自分の家だけでなく周りの景観との関係も考え、クライアントの要求にできるだけ応えようとする著者の考えの通りだと思います。著者の『住宅巡礼』なども面白く、今後の作品も期待しています。

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