子どもへの早期教育の一つとして、英会話のCDやビデオが良く売れていますが、自分の子にはさせたくないと以前から思っていた私にとっては共感できる1冊です。以前からの外来語に加え、カタカナことばがさらに増え、古き良き日本語が忘れられていることは事実ですし、ことばが変化している過程に、今までの言い方より、英語っぽい方がかっこいいからという要因がけっこうあると思います。また、現在はワープロ、パソコンが普及し、漢字を楽に表現できるようになったおかげで、漢字が多くかえっておかしく感じる文章を見る機会が増えました。しかし、この本の表現は、必要なところに漢字を使い、必要なところにひらがなを使っています。手で文を書く機会が少なくなった現在、このように字を使いこなせる人は多くはないでしょう。レビューを書いた私はどちらかといえば若者ですが、この本の主張は古く見えて実は新しいと思います。
「絶対語感」という言葉が少々言い過ぎという感じもしますが、子育て中の母親としては自分の言葉を見直すよいきっかけになる本だと思います。納得のできることばかりが書いてあり、最後の付録の日本語集は、「ああ、こんな言葉あんまり使わなかったな」と思うような動詞や形容詞などを発見し、自分の語彙の貧弱さを思い知らされたような気もいたします。そういう意味では、実践となる語もかなり書いてあり、「これはイカン!」というたぐいの戯言本ではなく、子育て中のお母さんにはぜひとも読んでもらいたい一冊にはなると思います。
最初にこの本を読んだときは、なるほど、そうか、ふむふむといった感じで一気に読めたが、読み終えて改めて著者の主張の根拠はなんだったかと自問してみると納得のいく理由が書かれていないことに気づく。<P>そもそも「絶対語感」の「絶対」とはなんなのか、幼児期に身についた語感がなぜそれほど重要なのか、また、一生不変なものなのか、結局のところよくわからなかった。すでに知っている内容について読むのを「アルファ読み」、未知の事柄が書いてあるものを読むのが「ベータ読み」と名づけているのはおもしろいとは思ったが、その二つの段階には断絶があり、「アルファ読み」をいくら続けても「ベータ読み」ができるようにはならないというその根拠は何も挙げられていない。<P>最近「おいしい話」のような「おいしい」の使い方が広まってきたが、これは単純に「うまい」に置き換えられるものではない。「おいしい」は自分にとって有益であるというニュアンスが含まれている。語感は時代とともに変わるものでその点は著者も理解しているはずなのだが、なぜか著者はやたらと新しいものに批判的である。<P>結局のところ、「現代の日本語の乱れに不満を持つ年配の人間が独りよがりの理屈をつけて文句を言う」というよくあるパターンの一つとみなされても仕方がないような本である。