「内容で大学を選ぶ」の章に「外国語が必須の大学院は行くな」と書いています。日本の大学関係者がこの本の著者と同様のことを書けば袋叩きにあうのは必至でしょう。つまりこの本は大学院というものについて現実を教えてくれているのであり、読む価値があると思います。「大学院教育の価値を認めない我が国の社会および企業はケシカラン」といった観念論ではなく、情報が詰まった本です。
懇切丁寧にアメリカの院での生き延び方を説明してくれている。あまりにも過酷な状況が想像されるので留学への憧れがかなり冷める効果もある。それにしても研究者になるというのは、この本にかかれているサバイバル術をマスターして博士号をとってもようやくスタート地点に立ったばかりということなのだ・・・。マイノリティーや留学生への個別アドバイスもあり、日本とは違う環境を実感させられる。
アメリカの大学院に留学なんてしないで、日本の大学院で博士号を取る人にこそ読んでほしい本である。その点、タイトルで大変損をしている。<P>この本は、ある意味においてアメリカ合理主義の塊であり、博士号取得までをまるで電化製品のマニュアルのように説明している。これは、放任主義と無責任を混同している日本の大学院教員の指導とは好対照であろう。また、現在の日本の大学院(ここでは社会科学系に限るが)で博士号取得がとても少ないため、博士課程の学生も博士号を「計画的に」取得するという考えをなかなか持ちづらいという状況もある。この意味で、非常に単純化すれば、日本とアメリカの博士号取得をめぐる状況は両極端だと言えよう。<P>アメリカの大学院に留学する人は、いやでもこのようなマ!ュアル化された博士号取得計画をする羽目になる。このようなアメリカ式には賛否両論もあろうが、少なくとも博士号取得までのステップを明確化し、かつその全体像を得、計画的に博士号を目指すその第一歩としては必要な本だといえる。