かなり分厚い本なのだが、何と一気に読んでしまった。 <BR>読者にそうさせるおもしろさとスピード感を持っているのである。<BR>聖書と言えば、人間味の伝わってこないキリストをはじめとした聖者達の言葉の羅列だと思っていたのだが、この小説はちがう。 イエス・キリストは神に帰依する、実に魅力に溢れた青年でありヒーローである。 さらに特記すべきはマグダラのマリアの美しさである。 この小説の全編にきらめきを与え続けている。 容姿の美しさ、キリストと出会うことにより信仰に目覚め、絵画でも有名な「ざんげ」の美しさ、そして何よりもキリストへの敬愛や信仰と、1人の男としてのキリストへの愛欲のはざまで懊悩する生身の女性としての美しさ・・・。 この小説の中で彼女は事実上ヒロインなのだ。<BR>そして他の登場人物も、実に生き生きと個性溢れる人々として描かれている。<BR>ぜひ一読をおすすめする、文句なしにおもしろい一冊である。
新約聖書を知っている者なら、更に興味深く読めるだろう。<P>ロイターの新約聖書の各部分の合理性に富んだひとつの「見方」は、現代人的ではあるが、とても納得し易いものだ。新約聖書の時代について何の知識もない者でも、その中心の本質的課題は普遍的であるがゆえに、共感を持てる。まるで映画のシーンを見ているような興奮の連続だ。徐々にではあるが、このような「人間であるイエス様」についての本が出てきているところに、新しい時代を感じる。
自由は闘わずには得られない。しかし、自由を得るための闘いが、勝利という形で完結をむかえることは、実は、決してないのだ。だからといって絶望してはいけない。なぜなら、闘い続けること、そこに意味があり、それが神(キリスト教、イスラム教、仏教などすべてが求める究極絶対の唯一神)のご意志であるからだ。ローマの頸木(くびき)からユダヤなど東洋の弱者たちを解放しようとして、結局は十字架に架けられたイエスが、その後も2千年以上に渡って、人間が自由を求めて闘う精神のコアたり得ている。なぜなら、世界は、この終わりなき聖なる不毛の闘いの真の意味を知っているからだ。妙に反戦的な日本人必読の書。