「障害は個性」なのか。<BR>ハンディを持つ人の努力になぜ感動するのか。<BR>そこには障害を持つ人々を差別もしくは区別する心性が潜んでいるのではないのか。<BR>「善きこと」「正義」は反論が許されないだけに、時として横暴である。<P>著者は弟が障害を持っていたこと、養護学校の教員を長く務めことなどからわかるように障害に対して深い理解を有している。<P>それだけに障害にたいして感動や賛美でなく、差別や拒絶でもない中間を、障害を見るのではなく人間を見る視点を提示している。<BR>これはやはり障害を持つ人と身近に、深く接し、それが自然になったからこそ到達し得た境地であろう。<P>障害は個性ではない。<BR>私も障害を有する人と接する機会があるので首肯するところが多い。<P>彼らにとっては我々の日常行動の一つでさえ大事であることもある。<BR>だからこそ障害を有する人々の克服への過程を蓄積・共有することや周囲の人々の普段着の支援が必要となるのである。<BR>大上段に振りかぶるのではなく、人間と人間としての普通のつきあいこそが最大の支援となるのであろう。
洋泉社の新書yは1冊目の「私は臓器を提供しない」以来ずっと注目してきました。「心はどこで壊れるか」でとてもいいインタビュアーをされていた佐藤幹夫さんの著作で、’ほんとうに『障害は個性』なのだろうか’という紹介文に共感を覚え購入しました。<P>養護学校教員時代の経験もふまえた実学の書です。論なんて付くと大学の先生の机上の空論のようですが決してそんなことはありません。地面にしっかり足を着いて、教育・福祉・ヒューマニズムの言葉でなく普通の言葉で書かれています。<BR>街でばったり障害者と会うかもしれない一般の人向けの本です。専門書ではありません。