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| 表現者―星野道夫
(
星野 道夫
)
私は星野道夫のほかの本を読んだことが無い。そして、この本を購入した時点では彼がすでにこの世に存在していない写真家であることさえも知らなかった。しかし、人生の節目を迎えようとするといつも「生きるって何だろう」「死ぬってどういうことなんだろう」と内省する癖のある自分が、この本に呼ばれたのは自然なことだったと思う。<P>星野の文章と写真には生と死が溢れている。星野は、私が今まで読んできた宗教書や哲学書と異なり、多弁にではなく淡々と生と死を「表現」する。それは、彼自身も生きること・死ぬことの意味を探し求め続け、生命の存在するもの全てにその答えの欠片を見出したからではないだろうか。「生命を有しているのは人間だけじゃない」。こんな単純なことを見失い、しきりに活字のみに頼って生命を頭の中だけで考えていた自分に気がつき、少し笑ってしまった。<P>また、この本の優れたところは、星野の発したメッセージの理解をサポートする、池澤夏樹らの解説が収録されているという点である。私の様な「飛び込み」の読者でも、星野道夫という写真家が、彼の人生を通じて表現しようとしたことを理解した、とはまでは言わないが「感じられ」たのは、彼らによる所が大きかった、と思う。<P>人生について考え、仏教書や哲学書を読まれている方にお勧めする。
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