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思考と行動における言語 ( S.I.ハヤカワ 大久保 忠利 )

「意味」とはどういうものなのかを本書ほど詳細に、そして丁寧に解説をしている本はそれほど多くないでしょう。<P>本書を読む事で現代マスコミが多用している、「大衆をさりげなくコントロールすること」の悪影響から自己を守ることができるはずですし、反対の立場に立つディベーターとの論争(あらゆる場面で展開される、自己とは異なる主張を持つ人たちと対峙する場面)において、少なくとも彼らがどういうロジックを展開しようとしているのかを明確に理解する事ができるはずです。<P>「その人の話がなかなか理解できない」と言う状況の多くは、「彼の語る内容の抽象化レベルが、”低すぎるか”反対に、”高すぎるか”による事を知り大いに頷きました。<P>抽象化のレベルが高すぎると、<BR>「赤という語はどんな意味だ?」<BR>「それは色だよ」<BR>「色って何だ?」<BR>「それは物の一つの性質さ」<BR>「性質って何だ?」<BR>という展開になり、質問を発している方から見たら、答えは五里霧中です。抽象化のレベルを下げると<BR>「赤という語はどんな意味だ?」<BR>「交差点で自動車が止まっている時に前方の信号灯を見たまえ。消防署に行って消防自動車がどんな具合に塗ってあるか見ても良い」<BR>という展開になります。<P>簡単に言えば「具体的に言う」(本書では”外在的”と言っていますが)と言うことですが、これが常に低すぎても、常に高すぎてもコミュニケーションが成り立たない、ということが本書では細かく説明されています。<P>このほかにも、<BR>「商売は商売だ」<BR>という文の、前者の”商売”と後者の”商売”では意味が全く異なる事など、読めば読むほど目からウロコです。<P>これほど味のある内容の本に出会う事はそうそう無いはずです。是非読んでみて下さい。

言語学のうち、構造主義と結びついた音韻論、生成文法を生み出した統語論に比べて、意味論はその後あまり華々しい注目はされませんでした。しかしメディア・リテラシーが盛んに語られるようになった現在、ふたたび本書の位置付けられている「一般意味論」にスポットライトがあてられる時期が来ているのではないでしょうか。<P>本書は「古き良きアメリカ」とはどんなものであったのかをわれわれに示してくれます。おそらく、いまではあまり見かけることがなくなったようなタイプの「アメリカ」がそこにはあります。<P>内容はそれほど難解なものではありません。高校生~大学教養過程ぐらいまでの間にぜひ一度目を通しておいてほしい1冊です。<BR>読み終わった後で、思考する力が飛躍的に伸びていることがきっと実感できると思います。

言語学についての本ですが、社会科学に興味がある人は言うに及ばず、自然科学に興味がある人も楽しく読めるでしょう。目の前のパソコンは、本当にあるのでしょうか?そんなことを考えさせてくれます。

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