「知覚する」ということの解明に一生涯をささげたギブソンの難解なアフォーダンス理論を平易なことばでわかり易く説明することを心がけながら書かれていることに好感が持てる。あえてアフォーダンスそのものに正面から切り込むことを巧妙に避けながら、その周辺領域をなぞることによってアフォーダンスの世界へ誘ってくれている。日本のアフォーダンス研究の第一人者である佐々木先生の巧妙な語り口に引き込まれてしまいます。入門書というには、あまりにも巧妙で完成度が高すぎます。脱帽!
知っている人には説明不要、日本における<BR>アフォーダンス研究の第一人者佐々木正人氏による<BR>アフォーダンス本の原点とも言えるバイブル。<BR>ギブソンの開拓した認知心理学の新分野「アフォーダンス」<BR>について、研究経緯を順に追う形で解説する。<BR>ただ正直、入門書としてはあまりお奨めじゃない。<BR>佐々木氏はその後数々のアフォーダンス本を出しており<BR>その論点や切り口は非常に多彩。そういった本や<BR>他の著書、あるいはD.A.ノーマンの狭義的アフォーダンスに<BR>比べるとこの本はいささか堅苦しく読み辛い。<BR>氏の文章も決して読み易くはないのでなおさらだ。<BR>ただ、内容的には噛めば噛むほどに味が出るスルメのように<BR>後から読み返してアフォーダンスの深遠さに何度も感心する。<BR>他のアフォーダンス本と併読しながら、<BR>そういったバイブル的な読み方をぜひして欲しい。
アフォーダンスについて生態心理学をやっている人に何回か概略を聞いたことはあったが、イマイチよくわからなかった。言わんとすること「情報は頭で処理するのではなく、すでに環境の中にある」ということになるんだろう。上手く泳げるということは、それだけ水の中にある私を泳がすアフォーダンスを上手に引き出しているという感じだ。このような喩えは今ではいくらでも浮かんでくるが、本書を読むまでは「かっちり」と理解したり、実感したりは出来ていなかった。実感してみると妙に世界が奥行きをもってひろがって感じます。<P>本書はアフォーダンス理論の創始者ギブソンの研究の歴史から、視覚の話におけるアフォーダンスの理論をとてもわかりやすく紐解いている。とても読みやすい小冊子で、よくここまで短い分量にエッセンスが整理されているものだと感嘆した。逆にいえば、この本は、最小の分量で、アフォーダンスの理論の本質を、ざっと理解させてくれると言えるだろう。現在進行形のギブソンの後継者達(ギブソニアン)の活動も概観しつつ、アフォーダンスという新しい「世界のとらえ方」を理解させてくれる。専門家の入門書としてだけでなく、一般への優れた啓蒙書にもなっている。なんら専門的背景知識がなくても、十分に引き込まれ、考えさせられ、ぱっと目が拓いた。<P>子供の頃から、パチンコ屋などの電光掲示で、個々は点滅をしているだけなのに、全体が帯状に移動しているように見えるのが不思議で不思議でよく凝視していた。その現象がファイ現象という名前で、まさにそれがギブソンが研究を始めたときに認知の科学で侃々諤々の議論の中心だったゲシュタルトの表象だと、この本で知った。また、人工知能研究におけるフレーム問題や、それを回避したMITのクリーチャー研究など、非常に学際的な話が、とてもわかりやすく、またブレークスルーしそうなワクワク感を感じた。<BR>知的閉塞感を感じているような方は、是非読まれてみれば、何か発見があるように思います。<BR>私はとても勇気づけられました。