構文はわかっても文脈に注意しないとついつい誤読してしまうような英文を集めて、こなれた訳文と解説を付したレベルの高い本です。受験英語参考書やTOEIC対策書はもう卒業して、タイムや文学作品を読んでいる人や翻訳家志望者向け。正確に読み訳すために文脈からどのように推論するのか、具体例で示してくれます。
まず、この本を手にして、 そのすてきな装丁と、手のひらにしっくりとなじむ感じが、すごく、気に入りました。実践的な英語読解力の本格的な指南書です。<BR> 頭をあんまり使わなくっても、ハイスコアーの取れるTOEICに、もう、飽きあきしてしまって、なんとなく空しく感じている方、ほんとに内容のある、高度で実践的な英文を、頭を使って正確に理解したいと思っている方に、ぜひ、お薦めしたい8星級の逸品です。<BR> この本で、最初に引用されているTIMEからの英文、In the last generation of 20th century, all revolutions are local. Technology assures that whatever struggles-in the streets, the factories, the schools-it reaches living rooms all over the world. この英文の前半を、「20世紀の最後の世代においては、あらゆる革命は局地的だ」などと、わけのわからないまま済ましているようでは、この英文を、なにもわかってはいませんよ、という、行方先生の指摘は、実にわかりやすく、上っ面な英語力へのうぬぼれに対する戒めとして、とても示唆にとんでいます。<BR> 朱牟田夏雄先生、中野好夫先生、上田勤先生の系譜に連なる行方照夫先生の<BR>、こんな素晴らしい本のおかげで、わたしの頭も久しぶりに、うれしそうに活動しはじめました。すごーく、感動しています。さすが、東大伝統の英文精読主義! それ、いけー!
最近、IT関連と英語上達法ほど愚劣な本ばかりが増え、見る気もしない低レベルの本の氾濫が加速度をますなかで、一点の輝きをもつ絶品です。佐々木高政の英文解釈考を終えたあとで、じっくり読むべきでしょう。中身もよく練れていて、さすが東大英語だとの伝統を感じます。<BR>”英文をいかに読むか”などのはるか上を行きますね。