さいはての島へ―ゲド戦記 3 みんなこんな本を読んできた さいはての島へ―ゲド戦記 3
 
 
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さいはての島へ―ゲド戦記 3 ( アーシュラ・K. ル・グウィン 清水 真砂子 Ursula K. Le Guin )

 このシリーズが現代にあっても未だに愛読者が多く、評価が高いのかと考えた時に、ファンタジーというものの重要さが見えてくる気がしました。現代では様々な誘惑が巷に横行しているため、子ども達の本(ファンタジー以外にも)離れが進行していると言えます。本書でも、「ハジア」なるものが麻薬のような物として扱われており、そこからも現代の姿を見て取る事が出来るように思えます。 <P> 様々なものが対として描かれている本書の中で、私は「夢(将来、未来に対する希望という意味での)」と「夢(寝ている時に見るもの)」が対比されているように思えました。一方は現実、一方は仮想の世界。英語でも日本語でもこの夢という単語は表と裏、両方を持ち合わせています。夢を実現させるために努力する事は素晴らしい事ですが、夢の世界に入り浸っているようではいけないし、現実を見据えなければいけないのではないでしょうか。 <P> 自分の本当の姿、現実的な夢と非現実的な夢と区別出来なくなってしまう事は恐ろしい事です。ゲドが「何かをする方がずっと楽」「向こうの声でもあったがそなたの声でもあった」と言った事や、その他本書全体は、自分の中で考える事の重要さ・困難さ、誘惑の持つ力など、本当に多くの教訓を含んでいるように思えて仕方がありません。おもわず感動して、頷いてしまいたくなる場面ばかりでした。 <P> 本当にこのゲドシリーズは素晴らしい。一冊でも、三冊を通してでも非常に意味深い作品となっています。子どもの頃に読んでおきたかった作品の一つです。一体、作者のル・グィンはどのような人なのでしょうか。

行きて帰りし物語。魔法に満ちたアースシーの世界。<BR>力強く羽ばたいているファンタジーの飛翔。<BR>ゲド戦記シリーズ第3巻の本書は、スリリングで面白かった。<BR>わくわくさせられました。<P>話の滑り出しは、こんな感じ。<BR>アースシーの世界のあちこちで、魔法の力が弱まっていることが分かります。<BR>その原因は何なのか? 一体何が起きているのか?<P>この危機的な状況を打開する使命を担ったのが、大賢人のゲドと、<BR>エンラッドの王の息子アレン。ふたりが、アースシーの魔法衰亡の原因を<BR>突き止め、災いを取り除くために、南海域に向けての航海に出発します。<P>航海のさなか、いくつもの危険と遭遇するうちに、ゲドに対するアレンの<P>気持ちが揺さぶられます。信頼と不信、共感と反発のはざまで、アレンの心の<BR>中の羅針盤の針がくるくると回転します。そして、アレンは成長していく。<BR>困難の中で精神的に強く、たくましくなっていくアレンの変化する姿に、<BR>本書の一番の読みごたえを感じました。<P>ラストシーンがいいんだなあ。<BR>ふたりの苦難の旅路の果てに待っていたものは何だったか?<BR>読み終えて、清々しい解放感を味わうことができました。<P>ひとつ残念だったのは、ゲドがだいぶ年をとっていたことでしょうか。<BR>もっと若い頃のゲドの活躍を見てみたかったと、そんな気持ちもしたことです。

ゲドにとって、第1巻が誕生の物語で、第2巻が成熟の物語であるなら、本書は老年と死の物語である。生と死、若者と老人、純粋と不純、ハレとケガレ、ファンタジーと現実、いろいろなものが対で語られる。実は、対で存在するものは他方がなければ自分も存在しない。自分の対になるものが、空気がぬけるように、川がせきとめられるように、力を失ってしまったとき、ここにかかれているように自分自身もリアリティーを喪失してしまうのかもしれない。人間の根本にある力をフィーリングに過ぎないとはいえ、直に感じさせてくれるというのもファンタジーの力なのかもしれない。人間の根源を見極め、自分の中の「対」のバランスを取るのが成熟ということなのかもしれない。

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