姉の友人の薦めで私がこの本を手に取ったのは高校生の頃でした。<BR>ですから読者対象年令ではありませんでしたが、夢中になって読みました。<P>全7冊あるうちの1冊です。<BR>イギリスの4人の兄弟姉妹が衣装ダンスの奥にあるナルニアという国を冒険します。<BR>お話の発想も語り口もやわらかく、諭すような印象を受けました。<P>後からこの作者が熱心なキリスト教徒で、宗教的な色が出ている童話だということを知って合点がいきました。<BR>しかし直接にはキリスト教のことは一切触れていませんから変な心配は無用かと思います。<P>本来宗教とは精神の安定を目的とした心のよりどころ的な意味合いがあると思います。<BR>見返りを求めない、心をまっすぐに保つための指針。<P>それこそが宗教の本質なのです。<BR>ゆえに、ビーバーやフォーンやものいうけものたちがアスランをけなげに信じ、敬愛している姿は、純粋に美しいと思います。<P>そしてこの本とナルニア国ものがたりシリーズは良い本であると自信を持って薦めます。<P>アスランや彼を信じる者達の行動や言葉の端々に宗教を離れた、人として基本的に備えるべき美徳である、思いやりや敬愛の精神や友情などを読み取ることができるからです。<BR>私の心の中にも、そういう思いは素直に伝わってきました。<P>「アスラン」を「自分の良心」と置き換えてみてください。<P>どういうことが良いことで、どういうことが他人を傷つけ、不幸にするような行動なのか。<BR>わかりやすく形にしたお話だと思います。<P>シリーズ中には、人種差別っぽいくだりが無いわけではありません。<BR>私も気になったのですが、シリーズ最後の本を読んでいただくとその点も問題ないと思えます。<P>ですからこの本だけでお終いにしないで、ぜひ、全7巻すべて読むことをおすすめします。<P>…こんなリクツをたれるとなんだかつまらなそうですね…。<BR>リクツなどはまったく考えずに、ただ面白い本が読みたい!という方ももちろん楽しめると思います。<P>子供たちはナルニアを支配する魔女からナルニアを救うため、長い冬に終わりを告げるため(クリスマスも来ない冬です)、ライオンのアスランと共に魔女に立ち向かいます。<BR>ナルニアにぜひ、訪れてみてください。<P>それから、私自身は宗教活動には大変不熱心です。キリスト教徒でもありません。念のため。
コートを着て、買ったばかりで外に出ていないブーツを履いて、<BR>タンスの中に入ってみたことがあります。皆さんはないですか?<BR>まだ英語も知らなければ外国に行ったこともなかった頃なので、<BR>ナルニアに行くのも英国に行くのも、大して違いはなかったのです。<BR>(ほんとです。1ドル=360円の時代です)<P>エドマンドが大嫌いで、みんなに信じてもらえないルーシーがかわいそうで、<BR>何とか本に入り込んでエドマンドを懲らしめてやりたい、と思ったものです。<BR>宗教的過ぎるという意見も聞きますし、確かにそうなのかもしれませんが<BR>もっと単純に、日常と違う世界での冒険を楽しむ、というつもりで読んだら、素直に楽しめると思います。<P>ちなみに、幼稚園の頃に一度挑戦したのですが、<BR>ライオンが怖くてちっとも楽しめませんでした。<BR>人間の言葉を話す動物って…よく考えると今でもちょっと怖い。
素晴らしい作品です。私自身まだ一作目しか読んでいませんが、訳者が後書きで述べている通り、ナルニアの魅力に引き込まれ、まるでそれを経験したかのような印象を受けました。本当に素晴らしい。<P> それはまず、作者の素晴らしい描写に理由があるのではないでしょうか。ナルニアという世界観、空想上の生き物、人間観、欲望、戦い・・・その全てが本を読んでいても映像で見ているかのような生き生きとした躍動感がありました。児童文学において、子どもを楽しませ、飽きさせる事がないようにしない事が第一条件だとすれば、本作品は十分すぎるくらいその条件を充たしているように思えます。<P> そして、本作品が名作と言われる所以は、作品にこめられた作者の伝えたかった事が、隠れてはいるけれども明確に伝わってくる点にあるような気がします。それがファンタジーという形式とうまく調和した作品と言えるでしょう。四人の人間観、英雄をライオンにした意味とそれ自体の意義、魔女の存在、ビーバー夫婦、タンスの存在、善と悪・・・など挙げ出したらきりがない程です。<P> それらの意味は本書を読んでそれぞれが、それぞれに違った意味を受け取る事が出来ると思います。決まった形の答えがあるのではなく、個人に考えさせる、また問いをなげかける形で、本作品は作者によって命を与えられているのだと思います。ですから、子どもだけでなく、大人が読んでも色んな意味でおもしろい作品ではないでしょうか。年代ごとに違った楽しみ方がある、それが児童文学の傑作と言われている作品の素晴らしさだと、私は思っています。<P> 本当に素晴らしい作品です。子どもの頃に読んでおきたかった・・・。