一作目が全体を通して伝えたい事を述べようとしていたのに対し、本作品はそれぞれの場面で細かな示唆が含まれているように感じられました。またただそれだけで終わっているのではなく、カスピアン王子や四人の子供の成長を通して、平等心や、正当性などがそれぞれがつながりを持たされているように思えます。<P> 例えばルーシーが二回目にナルニアに訪れた時(本作品)に、初めてアスランに出会った時、前会った時よりも(前作)よりも大きく感じたと言っています。これはアスランが言っているようにルーシーがどれだけ成長したかを示しているのではないでしょうか。どんな事でもその偉大さを理解できる技術や能力、知識があってこそ、本当の意味での偉大さがわかるものです。そして人はその時に初めて自分の成長と未熟さを確認し、更なる成長へとつなげる事ができるのだと思います。またピーターの真剣勝負の場面や、リーピチープの尻尾の喪失の場面など他にも興味深い部分はたくさんありました。<P> また森の生き物たちと人間の世界のはっきりとした境界も印象的でした。人間という生き物と、それ以外の生き物を区別するような、本作品での世界観は、作品が書かれた当時の経済成長の様子がうかがえるような気がしてなりません。遊びや生活が電子化してゆき、自然からの乖離が進行する事への作者の危惧が表現されているのではないでしょうか。ファンタジーは子どもに冒険心を思い起こさせ、自然の持つ教育力を再確認させているような気がします。<P> 個人的には一作目の『ライオンと魔女』の方が好きですが、本作品も、子供も大人も楽しむ事の出来る素晴らしい一冊だと思います。<BR>
親を殺されたことも知らずに、その伯父の手元で育てられていたカスピアンは幼い頃から「ナルニア」に憧れていました。<BR>おとぎ話として葬り去られていたナルニアを「ペベンシーの4兄妹」に助けられて復活させたとき、物言う木々や動物達も現れて、かっての偉大なナルニアが復活するのでした。<P>ナルニア復活に至るまでには、ペベンシー兄妹はかってのナルニアを見い出さなければならず、カスピアンは未知の世界のナルニアへ飛び込まなくてはなりません。<P>ス-ザンの「つのぶえ」がきっかけとなって、一同はアスランの元へ導かれ、真実を見い出し、苦しい戦いに力の限りを尽します。その中で一番大きな戦いは、実は心の中にある各々の不信感を取り除くことでした。<P>ネズミの勇士リープピーチをはじめ、小人の学者、巨人やフォーンなど脇役が本当に魅力的です。<P>いたいけな少年から、王となるまでのカスピアンの歩みは、人間の成長そのままといえるかもしれません。子供は憧れをもって、大人はカスピアンの成長を見守りながらこの本に夢中になれると思います。
「ナルニア国物語」の第二巻。<BR>ものいうけものやフォーンのことが消し去られ、忘れられた時代。<BR>伯父のミラース王のもとから逃げ出したカスピアン王子は森の中で<BR>「かれら」に出あう。伯父との戦いが始まり、追いつめられた王子は<BR>伝説のつのぶえをふいて、4人の王を呼び出す。<P>読む者の心に、恐れや不信をのりこえる力、真実なものへの信頼を呼び起こす名作。