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魔術師のおい ( C.S. ルイス C.S. Lewis 瀬田 貞二 )

 この物語は六巻目にして、ナルニアの起源を描いている作品ですが、その内容は明らかに創世記を意識してのものであるように思えます。聖書ではエデンの園にあるリンゴをヘビが騙してアダムとイブに食べさせますが、本書では魔女がリンゴを食べさせようとしたり、アスランがナルニアを創造したりする様子はまるでその通りです。しかし、本書では子どもは結局リンゴを食べません。それはディゴリーとポリーはアダムとイブではないからであり、児童文学の子どもへの教訓として存在しているからだと思います。魔女を復活させるという悪事を働いた事は子どもとしての好奇心であり、罪をつぐなうための冒険も重要な教訓なのではないでしょうか。<P> ナルニアと現実世界の間の世界の存在・・・やはりナルニアは現実の世界と表裏一体のような気がします。魔女は前の世界を滅ぼしていますが、現在人間もそのような行為をする可能性があるように思えます。本書には世界のはじまりと終わりの両方の可能性が書かれているのではないでしょうか。それはアスランが本の終わりでも言っている事でもあります。冒険や好奇心といった言葉は、子どもに必要な事ではありますが、やはり危険が伴うことでもあります。作者はその事を伝えたかったのではないでしょうか。<P> やっとすべての話がつながった気がします。魔女、タンス、街灯など前作で登場したものの起源がここで著されています。あと一作でナルニアも終わりです。できればずっと呼んでいたいような作品ばかりですが、七巻で終わらせる事に作者は意味を持たせているのかもしれません。楽しみなような、惜しいような複雑な気分ですが心して読みたいと思います。

主人公ディゴリーの母への愛情、ポリーと分かち合う冒険心が「滅び行く世界」と「新たな創造の世界」を経験させます。ルイスの豊かな力強い創造のイメージに魅了されてしまいます。<P>●ディゴリーの叔父は魔法使いですが、自分では危険を冒す勇気はなく、ポリーを騙して別世界へ送り込み、ディゴリーを止むなく救出に向かうハメに陥れます。<BR>●魔女はかって全てを支配する戦いに負け、魔術でチャーンの世界を滅ぼしてしまいます。同じ飽くなき欲求で人間の世界を支配しようとします。<P>●ディゴリーは母の命を救う手だてを求めてチャーンの世界へ行きますが、好奇心で魔女を甦らせてしまいます。ポリ-と協力して叔父と魔女を再度狭間の場所へ連れ戻し、結果ナルニア創造の場へと伴います。<P>●ナルニアの創造者アスランはディゴリーの「母の命を助ける何か」の求めに応じず、「魔法の林檎」を持ち帰り、魔女をつれてきた責任を果たすように命じます。<BR>●魔女はその林檎を盗んで食べ、ディゴリーにも「母に与えよ」と盗み取るようにそそのかします。<P>●葛藤の末にディゴリーはアスランに命じられた役目を果たします。約束を果たした時林檎はアスランからの贈り物となります。<BR>●アスランは世界をチャーンのように暴虐で支配してはならない、と言い聞かせてディゴリーとポリー、叔父を元の世界へ送り帰すのでした。<P>ルイスの世界観やモラルが二つの世界の対比を通して格調高く語られています。大人も子供も夢中になれる名作です。

今、映画化されて話題となった「指輪物語」に並ぶファンタジーの大傑作である全7巻からなる「ナルニア国物語」の中でも私はナルニア国ができるその瞬間を読んで感じれるこの巻が一番好きです。シリーズ6巻目とされるこの本ですが、「ナルニア年表」からいくと、この本が「起源」となるのですよね。なので私はこの本から読まれることをすすめます。ナルニア国の創造主である彼が私は大好きです。是非あなたもナルニアの世界にはまってください!

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