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さいごの戦い ( C.S. ルイス C.S. Lewis 瀬田 貞二 )

 本書では題名の通り、ナルニアの最後の戦いが描かれていますが、それは戦いと言うより戦争といったイメージのもので、ナルニアの他の物語に登場する戦とは異なった印象を受けました。私はそれがあらゆるものの生死に関わっているからだと思っています。ナルニアが崩壊する事で多くの生き物が生活の場を奪われる事になりますし、わずかな嘘が広がって世界を崩壊させるに至るような事実が描かれているからです。<P> 間違いなく、この物語の一つのキーワードは「嘘」でしょう。ナルニアは滅びてしまいますが、少しの真実を混ぜた強い嘘で外側を武装しても、内側の高大な真実の世界までも滅ぼす事はできなかったのです。なんという大きな教訓でしょう。この物語で表裏の関係であり、同様の物ともされているタシとアスランこそ、嘘と真実を象徴するものなのではないでしょうか。真実を利用する事によって真実らしい嘘を生み、その簡単な事が大きなものを崩しうるという事を伝えたかったのだと思います。<P> 最後の二巻で、ナルニアの始まりと終わりを描いた事は私にとって、このナルニアを読むにあたり大きな事でした。読み終えればその意味がきっとわかる事のように思えます。『朝びらき丸~』で消息をたったあの者や、結末にアスランが述べる事によってナルニアの真意が垣間見えたような気がしました。<P> こんな物語に出会えた事は幸せでした。これで終わりになるのは悲しい事ですが、ぜひ何度も読み返してみたいと思います。

<ナルニア国のおわり頃>、<ナルニア王家最後の王が>、で始まるこのお話は終末が暗示されています。かってナルニアへ来たことのある子供達とチリアン王の奮闘もむなしく、醜悪なサルの姦計によってナルニアは滅亡へと一直線に向かいます。<P>愛する世界と愛する者たちの敗北に絶望しますが、最後の時彼らが見い出したものは反対側の世界、真のナルニアでした。その時古いナルニアはアスランの命により終りを告げ、彼らは喜びに満たされて新たな命を得るのでした。<BR>アスランによるナルニアの輝かしい創世、そして雄渾壮大な終末のイメージは他に例を見ないくらい素晴らしいです。<P>余談:指輪物語は完全な勝利で終わりますが、去り行く者との永遠の決別があります。反対にナルニアは敗北と死で終わるのにもかかわらず、愛するもの全てとの再会が待っていました。トールキンとルイスがインクリングスというグループで創作を共にしていたことを考えると、興味がつきません。是非併せてご覧下さいませ。ファンタジーの魅力を満喫できると存じます。

 おめでとうございます。この本を手にしようとしている方の多くは,ナルニア国の勃興,隆盛を共に楽しんで最後に何かを得んとする方達です。どうぞナルニアの全てと世界の始まりに感じてください。<P> このシリーズを読んで大人になった方には,同じくルイスの著書「マラカンドラ」,「ペレランドラ」,「サルカンドラ」の三部作の世界もお薦めしたいと思います。

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