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クリスマス・キャロル ( チャールズ ディケンズ Charles Dickens 脇 明子 )

天才の代名詞というと科学ではアインシュタイン、音楽ではモーツァルトの名前が挙げられますが、文学で言うとやはりこのディケンズの名を挙げる人が多いのではないでしょうか。<BR>ディケンズの文章はとてもなめらかです。川がながれるようにさらさらと文章が綴られていきます。それでいて、ディーテールの描写も的確で、ストーリーの展開も見事です。<BR>そのディケンズの短編の傑作がこの「クリスマスキャロル」でしょう。<BR>がちがちに凝り固まった頑固爺さんのスクルージの心の変化を、まるで雪国の雪が春の陽射しとともに徐々に融けていくように自然に美しく描写するディケンズの筆力にはただただ圧倒されます。<BR>本書でディケンズが好きになったら、是非「大いなる遺産」などの長編も読んで見てください。長くなるからといって完成度が下がる事はありません、むしろ、その逆です。

 心理学の見解では、童話に登場する幽霊や化け物といった存在は、自分の醜い部分を暗示していると考えるそうです。そう考えると、この物語に登場する幽霊が、意地悪でケチなスクルージを更生させていく描写は見事です。<P> クリスマスという世界共通の祝うべき日を場面にしている事で、冬の寒さが、人というものの本来の温かさを強調しているように感じました。<P> 様々な示唆に富んだこの著作が名作と呼ばれる所以は、一度読めば誰にでも感じられる、その温かさにあると言って良いかもしれません。<P> 子どもにはクリスマスという日の夢と現実を、大人には自分という存在を、それぞれ確認させられる、そんな一冊ではないでしょうか。

クリスマス・キャロルはいいです。

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