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努力論 ( 幸田 露伴 )

幸田文が大好きで、お父さんの本も読んでみようと思って読みました。<BR>努力論とは、さぞお説教臭いのだろう、と覚悟していたのですが、<BR>暗い世の中の人々を何とか救えないものか、と渾身の力で書く<BR>作者の愛情を感じます。<BR>例えに出される風景の描写が美しく、それが作者の思想と本当に一体化していて、美しい本でした。<BR>偉大な作家の本なのだ、と実感しました。<BR>読めない漢字やわからない言葉がたくさんあったので<BR>時間をかけてじっくりと読み終えました。<BR>本の内容とこんな難しい本を読み上げられたことの両方に感動しました。

 露伴の『努力論』によれば、「惜福」と「分福」と「植福」というのがある。<BR> これが分かれば、あなたも幸福になるかもしれないから、まあ少し話を聞きなさい。<P> 世の中には運がある人ない人がいるようだが、もう少し詳しく見ると、ちょっと違う。<P> たとえば幸運がよく巡ってくる人は、「惜福」がある人だと露伴は言う。<BR> 「福の惜しむ」というのは、幸福に対してケチケチすることではなしに、逆に幸福に対してガツガツしないこと。たまたま巡ってきた幸福を使い尽くさないで、天に預けておく。そうすると福(ラッキー)に巡り会う確率がアップする。<P> 自分に回ってきた福を独り占めしないで、一部は人に分け与えるようにするのは「分福」である。この工夫で、より大きな福(ラッキー)が来ることになる。レヴィ・ストロースもいうように、あるいは『金持ち父さん』もいうように、人間は、本当に欲しいものを、誰かに与える(プレゼントする)ことを通してしか、手に入れることができないのである。<P> 幸運の女神が好むところを知り、女神が立ち寄る種をつくること、「福を植える」こととして「植福」という。<P> こういう幸福三説に『努力論』はかなりのページが割いている。<P> 『努力論』は「努力しろ」とか「努力して成功しろ」というお道徳本でなく、「努力してるのに、さっぱりだ」という人向けに、露伴が頼まれて書いたもの。頼む方も方だが、引き受ける方も方だ。そして、露伴はやっぱり凄かった。

露伴の文章は現代人にとって難しく読みにくい。<BR>私などは、理解するのに辞書を引きながら読んだりしたものだ。<BR>だが、そうした苦労をして読むのに値する本であると自信を持って推薦できる。<BR>内容についてはここでは述べない。ぜひ皆さんが手にとって、<BR>じっくり読んで味わってほしい。

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