中学の頃に本書を読んで以来 奈良が好きになった。<P> 和辻哲郎は哲学者であるわけだが 当時はそんなことも知らず 若き和辻の情熱のほとばしる本書を通じて ただ奈良に魅せられたということだと思う。30年以上たった今振り返って見ると 奈良の寺や仏像に惹かれる中学生というのも なんだか気色悪いような気もするが ここ30年間に 変わらず 奈良を愛する気持ちは変わらない。以来、亀井勝一郎、堀辰雄、志賀直哉、入江泰吉の書物を 身の回りにおいて 折に触れて 奈良を想う。時折は 本書を携えて 奈良を訪問する。和辻がその眼で眺めた 風物、寺、仏像を巡る。<BR> <BR> <BR>
20代に和辻のこの本を読んで,感激。車を飛ばして法隆寺に行きました。和辻の文章は素晴らしいの一言です。単に寺社の評論ではなく,日本文化,日本人の考察になっており,和辻のたたみかける文章が,日本人の心を打つ。
仕事と家庭内雑事に追われる中、紅葉を求めて古都を旅してきました。すっかり変わり果てた都市の中に、驚くほど変わらない空間がそちこちにある、京都の寺を歩きながらなぜか、もう20年も前に歩いた古都奈良に思いが飛びました。今回、無作為に回った寺や博物館など場所はいろいろでも仏さんたちと相対していると、あちこちから読みひろった文章、(和辻哲郎、亀井勝一郎、堀辰雄)が、不思議に甦ってくる不思議な体験をしました。自分が生まれる前にかかれたにもかかわらず、今、この同じかび臭いにおい、薄暗い中に差し込むわずかな光・・。あざやかに文章の断片ととともに、同じようにため息をつき、同じように放心したような懐かしい思いが、何度わきあがったことか。しかしそのどれもがほとんどすべて、教科書のなかの文章なのです。若い感受性のするどいころに受けた感動は少しも褪せることがないのがおどろきでした。近いうちに、どれか一冊の本を手に入れ、もういちど、思いをなぞって、古都をあるいてみたいとおもいます。