和辻のお勧めはやはり古寺巡礼とイタリア古寺巡礼です。もちろん和辻倫理学が最高峰ですが,これは非常に難解です。<BR>和辻の文章はいわゆる耽美派であり,和文調の日本的情緒に富んでいる。この風土は日本人の意識,文化,生活様式,など風土が人間に与える影響を欧州や砂漠地域と対比させながら,非常に説得力ある文章構成で訴える。しかし和辻の思い込みによる日本の美化も散見される。しかし和辻の対象を捉えこれを分析する感受性は素晴らしいものがこの風土にはいかんなくある。
有名な学者の書いた有名な本であり、ありがたく拝読した。<BR>そのうえで、二つのことを感じた。<BR>戦前の環境で、つまり、ひんぱんに海外へいけるわけでもないのに、よくここまで書いたなという感想がひとつ。<P>もうひとつは、それだけに現地を仔細に見ることができず、人と話すこともできなくて、部分を見て、あるいは思いつきを並べて断定するような部分も多いと感じた。<BR>たとえば、インドへの考察には、部分しか見ていないがゆえの即断を指摘し得るし、ほかも同様であろう。<P>これを総括するに、現代のわれわれがこの書にとらわれる必要はないものの、風土と文化との関連を論じる視点は、なお今日的意義をもっているように思う。