『スッタニパータ(『ブッダのことば』)』を読んだ人には続いておすすめしたい。また、これを読んで『スッタニパータ』がまだならそちらをおすすめする。とにかく当初の、というのは私にとっては本来のという意味でもあるが、ブッダのそもそもの教えがわかる。『スッタニパータ』とこの書を読んで、仏教が宗教であるという考えが多少変わってきた。究極の知恵と受け止めるほうが正しいのかもしれないという気がする。実際、中村元先生の説ではブッダは自分を宗教的開祖ではなく、一思想の展開者とみなしていたものらしい。そう考えてあらためて読むと、この書はやすらぎと心の明るさを与えてくれるようだ。
精神科医のなだいなだは彼を極度のうつ病と分析しカテゴリー的には極度の自己愛型人格障害に分類される。特に真理の言葉は最もポピュラーで人生の糧になる。しかし彼自身は日々の生活に追われて考える余裕すらない庶民ではなく一国の皇太子であった。ハーレム生活にも山海の珍味にも最高の衣服にも飽きた彼はいつか人間は死ぬという有閑階級的な哲学的問題に悩むようになる。妻を娶り子を設けるが極度の鬱状態にあった彼は息子に悪魔を意味するラーフラという名をつけ妻子と一国の皇太子の責任も嫌になりそれを勝手に捨てて出奔し求道生活に入り遂に悟りを開き人々に教えを説きその名声は故国にまで届く。動機はともかく結果がよかった。彼の教えに救われた人々は歴史上数知れない。
言い方は雑ですがー本書を軽んじることなかれーです。<BR> <BR> 中村氏の丁寧な訳によって,本書の一言一言,しみじみと尊く響くのです。本書は,何もキリスト教やイスラム教など他の宗教の方には分かるはずもない,というわけではなく,むしろ,そのような方に読んでいただきたいと思います。仏教は,たいへん素晴らしい宗教であり,その教えは人間の長い歴史や沿革を経験した非常に奥の深いものですので,甚だ仏教というもの自体,捉えにくいところがあります。しかし,本書は,たいへん分かりやすく記されており,仏教について知識がなくても十分意義があります。<P> 自己を見直す良い機会になるはずです。そして,すっきりとした清々しい気持ちになるはずです。ぜひ,お読みください。<BR> <BR>