文明の真髄を語る本である。私たちが普段何気なく書き記している漢字は、現在、世界に生きている「文字」の中でも、特異な象形文字です。古代に於いて象形文字は最も最初に現れた。古代中国にその起源があり、それは、東アジアの文化に決定的な影響を及ぼし、日本の文化はこの漢字が無ければ、その存在は随分今とは変化を余儀なくされたでしょう。江戸・明治に於いてさえ、漢籍の素読は精神の成長に基本的な基礎となった。漢詩然り、短歌・俳句然り、漢語調はやがて言文一致体となり、小説も評論も当世風と成ったが、それでも漢字が無かったら日本語の表現は、今より随分痩せてしまうと思います。今は、漢字より日本語より、英語が幅を聞かす時代だ、日本語の使い方が良く身に付かない内に、中途半端な英語を学ばせようとする時代だ。勿論、英語が母国語と同じ様に読み書き話せれば、言うことは無いが、基礎は母国語にあると思う、その上で外国語が2つくらい身に付けば理想ですが、中々その様にはいかない。<BR>白川先生は、漢字研究の大碩学であられる、それは、甲骨文字の業績や、また「字統」や「字訓」などの素晴しい著書を、お書きになっている。この新書を読んで、何よりも漢字に対する目が広がった事を心から感謝したい、今の日本では、読む力、書く力は、随分痩せて来ているのではないか?子供達に本当に良いテキストを与えていないのではないか?多くの象形文字は滅び去ったが、漢字はこれからも生きつづけられるか?先生はお書きになっている「民族とその言葉が滅びなくとも、文字はその文化の敗北によって滅びる」と!
確かにバンヴェニスト(『一般言語学の諸問題』とか『ヨーロッパ諸制度語彙』)は面白いが、実は最初そのエラさがよくわからなかった。白川静を読んで(バンヴェニストより前から読んでいたが、読み返して)、そのエラさがわかった。バンヴェニストは偉い。白川静はもっと偉い。<P> おそらく競合品よりはいくらか安いためによく利用されているらしい学研の『漢和辞典』という事典があるが、これをつくった藤堂明保(東大教授)という中国文学研究者が、この『漢字』をめちゃくちゃ貶した書評を書いている。その貶し方というのが、「仮にも岩波新書で「カンジ」というタイトルの本を出すのに、こんなヤロウに書かせるなんて、編集者は何考えてるのだ」というものだった。こんな話があるから、「白川先生も、国立大学出てたら、今頃文化勲章なのに」というウワサも立つのだろう。東大のセンセイが「私大あがりがナマイキな、ちょっとだまってろ」という訳である。<P> しかし、これ以上の話は無用だろう(別にどっちの肩を持ちたい訳ではないし)。なお、白川静が藤堂明保をこてんぱんにやっつける「書評の反論」が、『文字逍遥』(平凡社ライブラリ)に収録されている。<BR>
「大鵬」はもともと台風現象のことだったとか、漢字の成り立ちそのものについてよくわかる。漢字再発見、という感じです。あわせて、少し値段が高いですが、字源辞典「字統」もお勧めです。