ロサンゼルスのディズニーランドで、東京ディズニーランド開園時に日本人スタッフの研修の仲立ちを行い、ウォルト・ディズニーの伝記の翻訳者でもある能登路氏が、「ディズニーランドとは何か」という問題に取り組んだ力作。ディズニーの生涯を基本軸に、各アトラクションの内実と意味合いが分析されている。アメリカのディズニーランド、ディズニーワールドが中心で、浦安の話ではない。<P> ディズニーランドがいかに隅々まで統制・計画された空間なのか。ディズニーランドへの訪問方法、入場、アトラクションへのアプローチと分析が進むにつれ、薄ら寒いほどの管理体制と計算が明らかになり、アメリカンドリームの恐ろしさが見えてくる。しかし能登路氏はそれを糾弾するだけではなく、ディズニーの素晴らしい思いつきとして賞賛することも忘れない。そのあたりのバランスが、本書を優れた書物にしている点だろう。<BR> ディズニーランド嫌いの私にも、「ちょっと行ってみようか」と思わせるほど魅力的であった。<BR> アメリカ文化に関心のある方には必須の書物。
ディズニーランド・ディズニーワールドは、アメリカ人にとって宗教的聖地ともいえる重要なトポス(場所)です。<P>アメリカにはいくつか特徴がありますが、よく言われるのがウィリアムズバーグと並んでディズニーワールドに代表される全体主義と同質の「空間管理の徹底さ」と、その「管理を管理として見せないような隠蔽する周到さ」です。人の歩く道順や視線の受ける感情まで全て計算されコントロールされたディズニーランドは、ウォルマートやセブンイレブンなどアメリカで発達したフランチャイズ店舗ノウハウの結実でもあります。特にウィリアムズバーグのように、昔の町一つ丸ごと住民ごと再現する空間の再現支配への執拗な執念は、僕にはちょっと不気味です。<P>中西部という土地は、僕のような日本人!とっては馴染みの無い土地なのですが、開拓者時代は、極限の過酷な環境だったんですね。その反動から、無菌で限りなく清潔さに満ちた(ネズミでさえ小奇麗な)空間を想像するようになったのですね。あの偏執的な清潔さと空間管理は、そういった情熱から来ていると知って、納得しました。そう考えるとアメリカ人のイマジネーションは、中西部からの力がでかいのでしょうか。その他の南部、北部、東部も西部・・・その広さに呆然とします。<P>僕は大学の教科書として、これを読んだのですが、既にディズニーランド論・アメリカ論を語る上では、必須の文献だと思います。同時にちょっとした読み物としても読める手軽さ、平易さです。
ウォルト・ディズニーの性格からディズニーランドに関することまですべてが記載されている。これを通してアメリカ文化を知ることができるのである。時間を忘れて読んでしまう本である。