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| 多神教と一神教―古代地中海世界の宗教ドラマ
(
本村 凌二
)
今世紀の初頭からやたらとホットな「一神教問題」に関係するかと思って一読してみたが、やや期待はずれであった。「やや」ではあるが。著者の専門である古代ローマを中心に、メソポタミア、エジプト、ギリシアなどの生活や思想に根づいた、あくまでも具体的で目に見え耳に聞こえ、そして複数形である「神々」の実相を丁寧に説明していき、やがてユダヤ教という「一神教」が登場してくる歴史的な条件を探って行くのだが、そこで登場する神様たちの数が多くあまり馴染みのないこともあって、これが読み通すのにけっこう苦労するのである。それは「神々」の「声」が聞こえない人間には共感できない世界だからだよ、という、いわばこちら側の能力の不足も読みの困難の原因であろうか。<BR>問題の、「一神教」が発生した原因についての仮説は、期待通り興味ぶかかった。根本的な理由は二つ。アルファベットという汎用性の高い表音文字の開発・普及と、そして何よりユダヤ民族の「危機と抑圧」によるルサンチマンの裏返し的な創造力である。後者はフロイト=岸田秀の仮説を歴史学者の観点から再検討したものだが、おもしろいと思ったのは前者の方だ。古代文明が複雑化しすぎたがゆえに、多様な文字言語の整理統合が進む中で、とりわけ便利なアルファベットが主導権を握った。文字の一元化は神々の一元化とパラレルに進行し、やがて「神々」の「沈黙」の続く悲劇の時代を生きる人々の魂の空白に、唯一の絶対的な〈神〉が宿る。ここから、現代のIT社会における「神」のゆくえなど、いくつもの論点が浮上してくる説である。または、一神教の哲学バージョンともいわれるプラトン哲学とのからみでもっとつっこんで論じて欲しかったのだが、それは古代史家である著者には無理な要求か。やはり、勝手な期待のしすぎであったようだ。
古代地中海世界を宗教的な観点から心性を結びつけています。<BR>古代の世界では神々の声が聞こえたのだが、次第に聞こえなくなりました。<BR>その結果救済宗教が活発になり、その中のキリスト教が勢力を伸ばしたと言います。<BR>読後の感想として、古代の人々が神々の声を聞くという体験なしには<BR>一神教は生まれなかったのではないかと思っています。
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