ジャンヌの時代から現代までのジャンヌ像がどのように描かれてきたのかを整理しています。 <BR>その中でジャンヌの活躍の背景に病気説、傀儡説、はたまた王女説など<BR>が飛び出してきたことを指摘しています。 <BR>全体から歴史的に各時代のジャンヌがどのように利用されてきたかが分かります。 <BR>さらに言えば死者が後世の人たちにどのように扱われているのかが分かる一冊です。
イギリスがフランスをその支配下に置こうと画策した百年戦争も末期、フランスに一人の英雄が登場する。それがジャンヌ・ダルクだ。その聖女ジャンヌは天王山とでも言うべきオルレアンの地を奪還し、時の王太子シャルル7世を即位させる。しかしその栄光とは無縁の最期―火刑で生涯を閉じる。<P> 以上のような彼女の辿った軌跡は周知の方も多いだろう。彼女についての著書は枚挙に遑がないことからも、それは明らかなことである。本書はそんな彼女を歴史的に真正面から捉えたものではない。一般的な既刊書とは違い、彼女の「生前」にではなく「没後」に重点を置いている。彼女を解き明かす『処刑裁判記録』や『復権裁判記録』の仔細を分析したり、ジャンヌを巡る論争や伝説を描き、これまでジャンヌはどのように考えられてきたのかを追っていく。<P> 少し違った視点からジャンヌを捉えている点で、新鮮で大変興味深い。没後も尚「歴史を生き続ける」ジャンヌを追った大作である。