本書の内容は、著者がワイドショーなんかにコメンテーターで出て言うコメントを想像してもらえばよい、と思います。<P>「何かおかしいですよねえ」「最近よくある傾向です」<P>毒にも薬にもならない。読んでいるほうももっともらしいことが書いてあるのでふんふんと思ってあっという間に読了、ただし読後は何も残らない。<P>精神科医が政治や社会を語るな!とは言いませんが、これほど印象に残らない本も珍しい。
はっきりした物言いではないが、おそらく近年の日本の「右傾化」を憂いており、それらの風潮に「警鐘を鳴らしている」らしいことはうかがえる。<BR> 具体的には、自衛隊や憲法第九条、イラクの日本人人質問題などである。これらの問題について、どうも全体主義的、ファシズム的な考えが浸透していて、危険な兆候がみられる、急ぎすぎた結論を出そうとする雰囲気がある、これでいいのだろうか、ということが言いたいらしい。<BR> 具体的な論述を読むと、これらの問題への問題意識はなるほどそれなりに根拠があることがわかるが、具体的にそれでは我々がどうすればよいのかというとどうもはっきりした答えは出てこない。<BR> もちろん民主主義的な手続きが大事なのは同意であり、いつの世も世の中に批判的な目が必要なわけで、その点では一定の評価はできるが、具体的な対案が出されないのでは十分な議論は進まないであろう。
自民党が圧勝したいまならではのタイムリーな警鐘として受け止めた。<BR>メディアの議論も、多様性を欠き、白か黒かの論調が多い。また、ワイドショー的な面白さを主眼に置くため、議論を極端に単純化する傾向も多いのではないだろうか。<BR>そのような状況への警鐘という意味においては、本書は価値を認める。