初出は1983年の『週間朝日』。<BR> Ⅱ巻では、スペインのカスティーリャ地方とポルトガルが取り上げられている。<BR> スペインの印象の強い本だった。カトリックの色濃いスペインは、宗教と軍事力でもって世界を侵略した。少し歴史が違えば、日本もどうなっていたか分からない。しかし、現在のスペインには、かつての栄光はない。特にカスティーリャには不毛の土地が広がるばかりである。<BR> このあたりの歴史感覚がうまく捉えられていて、なかなかの一冊だった。
スペインの首都マドリードから、エル・グレコの活動拠点として名高いトレドを経由し、リスボン特急に乗ってポルトガルへと至る。このリベリア半島を横断する「南蛮のみち」を旅しながら、大航海時代に君臨した二大海洋国家の過去と現在を考察するのが本書です。<P>「日の沈まぬ帝国」と謳われたスペインが何故没落したのか。リベリア半島が海洋時代の主役となり得た理由は何なのか。そして、遠く海を隔てた日本に南蛮文化がもらたしたものは一体何だったのか。<P>これらのテーマを、決して学術的になることなく、その土地の空気を吸いながら、あくまで氏の主観で語るところが心地よい。歴史解説書では得られない、一味違う「ラテン観」をさらりと堪能できる一冊です。
上巻ではバスクを集中的に取り上げた著者だが、下巻ではマドリッドからトレドへ、そしてそのままタホ河沿いに西へと向かい、ポルトガルへと旅が続く。アンダルシアやカタルーニャにも行って欲しかったところではあるが、もしかしたら堀田善衛の著作を意識したのかもしれない。堀田はアストゥリアス、グラナダ、バルセロナにそれぞれしばらくの間滞在して、司馬に劣らず素晴らしいエッセイをものにしている。二人の著作を合わせればスペイン全土がほぼ網羅されるのである。<P> 本巻ではポルトガルの大航海時代に関する記述がやはり思い入れが感じられる部分で、陸軍で満州でという司馬の軍歴から海への憧れが強いのかもしれない。<P> 堀田善衛『スペイン断章』『バルセロナにて』『歴史の長い影』『ゴヤ!も併せてお奨めする。