第二次世界大戦の転回点となった、スターリングラードの戦いを<BR>克明に描いた本書。<P>真珠湾攻撃やミッドウェー会戦ならまだしも、最初は<BR>スターリングラードの戦いなんてあまりイメージが湧かないと<BR>思っていたけど、本書はとても読み易いノンフィクションに仕上がってて、<BR>あまり戦史に詳しくない方が読んでも興味深い作品になっていると思います。<P>淡々とした語り口が逆に戦争の悲惨さを感じさせ、<BR>文章にたくさん引用されている前線の兵士たちの手紙や証言といった<BR>生の声がそれに一役買っています。<P>単なる戦史ものの枠を超え、戦争が本当に恐ろしいということ、<BR>人が犯してきた愚行の数々など、歴史を振り返る上で色々<BR>考えさせられる内容でした。
両軍あわせて200万人が対峙し、最終的に包囲されたドイツ軍側だけでも25万人を超えるという史上最大の作戦がスターリングラード攻防戦だ(陸海空の自衛隊を併せても約20万人)。<P> それはヒトラーとスターリンという独裁者の狂気によって始まり、狂気によって深刻な被害がもたらされた。石油の出るカフカス地方奪取に失敗した時は戦争を終わらせなければならないと将軍たちに伝えていたヒトラーは、カフカス奪取が不可能になると、スターリンという名前を冠した都市を奪取することで、象徴的な勝利を狙うことに方針転換する。国の宝ともいうべき第六軍に満足な防寒具も与えないまま。<P> 一方で、赤軍を自ら粛正してまったことで、弱体化させたスターリンは逆ギレして「1歩たりと後退するな」「恐怖に駆られる者、臆病者はその場で射殺する」という命令を出す。これによって、ソ連軍は脱走兵を射殺する第二戦列を組織し、退却しようとした部隊があれば機関銃を浴びかけたという。こんな無法なことが60年前に行われていたかと思うと、信じられない気がする。
独ソ戦の分岐点となったスターリングラードの戦いを詳細に描いた作品<BR>です。<BR>従来からの資料を纏めた感じで新しい解釈等は有りませんが、驚かされるのは、本来は副次的な目標で有った都市スターリングラードが、ヒトラーとスターリンの思惑により決戦の場と変わっていく事です、その後は、多くの人命の浪費が繰り返されてゆきドイツ第六軍の崩壊、降伏となります。<BR>30万人の捕虜の内、戦後9千人しか祖国ドイツの戻れなかった話は有名ですが、ドイツ兵の中には50,000人ものロシア人補助兵がいた事は知られていませんでした、そしてだれも捕虜になっていない事も。<BR>戦略、戦闘だけでなく、飢えて死んでゆく市民 胴体に爆弾を付けドイツ戦車にぶつかって行くソ連軍用犬の話等読ませる話が多い本です。<BR>戦況を理解できる地図や写真が少なく、広い地域で百万を超える軍隊が戦った状況が分かりずらく何度も読み直す事になりました。<P>文庫本になって求め易くなりました、お薦めできる本です。