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| ニューヨーク散歩―街道をゆく〈39〉
(
司馬 遼太郎
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10年ぶりに再読した。アメリカ素描に比べて、ニューヨークに限定した本書は、ドナルド・キーンさんの知人・友人を介してのニューヨークであり、前作素描に比べると人物の歴史的回顧談で、何も見ていないに等しい記述。彼は歴史というより人物の本質を見据えようとする姿勢が強い。その典型が本書に現れている。 「街道をゆく」シリーズでは何冊か海外への旅行を綴ったものがありますが、アメリカ旅行を記したものはこの本書しかありません。著者がニューヨークにあるコロンビア大学で日本(文化)に関する講演をするための旅行で目にしたものや出会った人々を中心に話が展開します。私にとって印象的だったのは、日米修好通商条約を締結した際のアメリカ側代表者ハリスの墓参りを通して、彼の生い立ちや日本側との折衝の日々を描いた箇所、そして戦前のコロンビア大学で唯一の日本人教授が後世の日本学研究者を生んでいった過程を紹介していく過程。
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