サンタクロースって本当にいるの?本書は1897年にアメリカの少女が投げかけた質問に新聞社サンが答えた社説を翻訳したものです。<P> 皆さんのお宅では、サンタクロースはいるのかどうかという幼い弟妹の問いかけに、としかさの兄姉が訳知り顔にこんな風にニヤニヤしながら答えたりしていませんか。「もちろんいるさ。毎年隣の部屋からやって来るんだよ」と。<P> そんな風景にあわてた大人たちがこうした本を求めて書店に走る姿も想像できます。確かにこの本は役立つでしょう。しかし本書はサンタがいるかどうかを証明することだけが目的の本ではありません。<P> この本が訴えかけるのは、想像する心の大切さです。<P> 「目に見えない世界をおおいかくしているまくは、どんな力のつよい人にも(中略)ひきさくことはできません。ただ、信頼と想像力と詩と愛とロマンスだけが、そのカーテンをいっときひきのけて、まくのむこうの、たとえようもなくうつくしく、かがやかしいものを、みせてくれるのです。」<P> 美しく、気高く、輝かしい世界を見せてくれる想像力。そしてその想像したものを手ごたえのある確かなものとして創り出そう(創造しよう)とする取り組み。それはいつの時代にも、子供だけではなくもちろん多くの大人たちにも必要なことです。<P> さらにいえば想像の対象になるのは夢物語の世界だけではありません。<BR> いじめられている子供が物怖じして見せない心の傷。介護を必要としながら世間に対する遠慮もあって隠さざるをえない高齢者の思い。歩道と車道の段差に対して障害者が抱く恐怖感。<BR> これらを想像することを出発点にして、私たちは何か新しい世界を創りだし、子供たちに伝えていくこともできるのです。<P> サンタがいることを子供に教えるためのアンチョコとしてこの本を使うだけでは残念です。大人たちにも「想像して創造する」ことの大切さを語り伝える本として多くの人が手にすることを希望します。
単純に惹かれるタイトルがつけてある、<BR>感動的な答えが聞けて泣ける、というのとは、<BR>まったく違います。<BR>「Yes,Virginia」から始まるこの文が書かれて、もう100年もたっているそうですが、<BR>優しい心や夢や希望など、目には見えないけれど確かにあるもの、人を豊かにしてくれるものが、<BR>今ほど求められている時代もないのではないでしょうか。<BR>そういった気持ちをサンタクロースと呼ぶなら、<BR>現代はサンタが最も人気のある(需要の高い?)時代ですよね。<BR>本当に価値があることって何なのか、もう一度考えさせてくれる本です。
「真理」についてこれほど簡単な言葉で語る本はないと思います。<BR>そして、サンタクロースについての内容もさることながら、子どもに対して敬意を払っている事がよく伝わります。<BR> 人生を論じる上で子どもを一人前に扱うことこそ、良い児童書には必要不可欠な要素です。<P> そして、現在、大人が児童書を読んでノスタルジーに浸ったり、かわいらしい夢の世界に行くことを楽しんだり・・・というような一種の「絵本の世界への観光」が流行していますが、この本は一見そのような行為に最も適した本のような雰囲気をかもし出しながらも、流行とは一線を画し、大人に対しても、人生について鋭い感性で真剣に向き合うことを強く訴えているのです。<BR> 美しく、繊細なのに、世界で一番強い石、ダイヤモンドのような、作品です。<BR>