童話というものは、本来子供が読むものだけど、この本に関してはむしろ大人が読むべきだと思う。<BR>子供ならではの柔軟な感性でしか得られないものもあるけど、大人ならではの感性でしか得られないものもある。<BR>登場人物の台詞ひとつひとつが意味深で、メッセージ性を感じ、ところどころの風景描写が、視覚的でまるで絵を描くように美しく表現されている。<BR>これを読んで、童話ほど奥が深い話は無いことを悟った。<P>とにかく、大人が読んでも十分楽しめる作品だと思う。買って損は絶対無い。
今年はアンデルセンの生誕200年ということで、雪の女王もテレビアニメ化されるなど結構話題豊富です。アニメの雪の女王は1年近い放送期間を考慮したためか、テレビ独自のエピソードを追加し、この話を長時間ドラマとして演出しています。それに対してこの雪の女王の本は正真正銘のアンデルセン著の完訳本なので本当の話が分かります。<P> 雪の女王は初めて読みましたが、話の構成は思ったよりもシンプルでした。特徴的なのはまるで舞台劇のように7つの章からなっていることです。序章として悪魔と鏡の話が出てきます(第1章;かがみとそのかけらについて)。それによると割れた鏡および悪魔と雪の女王との間には何の(主従)関係もなく、独立した事象となっています。女王の子分達が鏡を割ったようにしてしまうと話が通りやすいので日本ではそんな話が通っているのかも知れません。鏡を割ってしまうシーンを多くの絵本が省略しているのは、このあたりの説明がしにくいことと、この話を舞台劇のシナリオと見なしたときに序章として扱われるからなのでしょう。<P> 全体を通してみたときにゲルダという強い女性像をアンデルセンが築きあげているのが印象的です。運命に流されて最後は天に召されるそれまでのアンデルセン童話の女主人公達とは違います。ゲルダは動物と会話したり、天使を呼んだりすることのできる強い女の子です。この大人向けとも思えるアンデルセンの名作を今年になって読むことができたのはとてもラッキーなことのように思えます。昔から抱いていた雪の女王へのイメージと異なる部分もあり、謎は謎として残りました。ぜひご一読をお勧めします。