この本は、三省堂の新明解国語辞典が、いかに語義・語釈にこだわり、類書にないような大胆な記載をしているか解き明かした本である。<P>新明解国語辞典が話題になっているのは知っていたし、自分自身、中学入学時に買った国語辞典が新明解の初版で、以来、なんとなく、自分にとっての思い出の辞書であったものの、その後の版を使うことがないまま、40代を迎えていた。本書は、空港の売店の文庫本売り場で、飛行機の中での読み物を探していたとき、たまたま見つけ手にした。<P>すでに、赤瀬川原平氏の「新解さんの謎」が先行してあるが、実は、赤瀬川氏に新明解国語辞典についての本を書いてもらうように企画したのも、当時、文藝春秋に在籍していた著者(鈴木マキコ、夏石鈴子)であることが、本書の冒頭で明かされる。いわば、もともとの新解ブームの仕掛人である。中学以来、新明解国語辞典の魅力に取りつかれ、第二版から三、四、五版とその変化を追い続けて、まとめている。<P>掛け値なしに「おもしろい」。今年、発行された新明解国語辞典の第六版を買って読みたくなった。
夏石鈴子こそ赤瀬川氏に『新解さんの謎』を書かせたあの鈴木マキコその人である。<BR>その彼女が、すっかり目覚めてしまった『新解さん』の面白さについてのレポートがついに文庫化されたのだ。手軽に持ち歩けるが、人目を気にするなら、電車の中など公の場で広げることはお薦めできない。絶対に吹き出してしまうからだ。<P>女性の感性のなせる技か、その絶妙なタイミングでの「つっこみ」は赤瀬川氏よりも感情的というか、ナマで生きが良い。<BR>単なる字引ではなく、辞書としては独自の道を突き進む『新解さん』の魅力を愛する人ならぜひ1冊備えたいものだ。
結局、赤瀬川源平氏の「新解さんの謎」は、SM嬢と赤瀬川氏のやりとりではあったけど、新明解に対するパワーはSM嬢にあって、赤瀬川氏はそれにつきあっていただけという感はぬぐえない。<P>そして、本書は、そのSM嬢が書いた本である。ストレートである。徹底的である。全編「新明解」である。<P>というわけで、その道に興味があるなら、絶対に読まないといけない。そういう本だと思う。<P>SM嬢の、ものの考え方も結構楽しめるし。