たぶん、森さんはこの「A」制作を通して、ご自分も属していたテレビ業界に多くの(敵とはいわないまでも)対立者をつくったのではないかしら…と思います。<P>ある特定の集団に対して、社会全体が突出して攻撃的になるとき、そこには何かの「思考停止」があるということが、この本を読むとよくわかります。それが「テレビ業界」という場所で語られているので、特に報道関係に興味がある人は、いちど読んでみたらいいのでは。ぜひ。<BR>「暴露本」という形ではない抗議の仕方があるなぁ、と思わされました。<P>また、そうじゃなくても、「アメリカは嫌い!」「北朝鮮は怖い!」と、なんとなく思ってしまいがちな今日この頃。「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」という著者の言葉は、決して、よくいわれる「安易なヒューマニズム」ではないということが、数々のエピソードから読みとれると思います。
表層的であまりにも青臭いと思った。<BR>理解し難いことの表面の瑣末な部分だけを捉え、そこに自己及びその属する集団との共通点をかなり強引に見出し、不必要な理解を示している著者の姿勢に違和感を覚えた。<P>過激派シンパよろしく、なにがしらの回春剤を得たい方、または茫漠とした不安にかられ、過多なほど社会と自分に理想を持っている方の暇潰しには良いかと思う。
森達也はドキュメンタリーの仕事を「客観的な真実を事象から切り取ることでなく、主観的な真実を事象から抽出することだ。」としている。<P>本書はオウム真理教を広報担当の荒木浩を追うことによって見つめている。そこには報道ではなぜか現れてこない様々な事象が、作者森の前に起こる。森はそこから事象をあくまで主観的にカメラに切り取っていく。あー、映像を観てみたい。<P>彼の著作はこの現実や社会の闇を本当によく切り取って我々に提示してくれる。ほんとうに良書であり、ドキュメンタリーを志す人間にとっては必読の書であります。それにしてもすごい人である。