主人公のだいたい半分くらいは、実際に起きた「池袋通り魔殺人事件」の被告がモデルになっている。<BR>この小説は救いようのない物語である。重いものを我々に突きつける作品だ。<BR>ストーリーが二人称で進められていくのはやや違和感があった。
本当のことは分からないですが、著者にとっては<BR>避けては通れなかったテーマだったのではないでしょうか。<BR>実際に起きた事件とそれを取材した著者が抱えた苦悩が<BR>作品全体を通して伝わってくるようです。<BR>1人では到底かかえきれない苦悩を背負ってしまった人間は、<BR>果たしてどのような境地に至るのか。<BR>モデルとなったであろう事件は最悪の結果となってしまいましたが、<BR>少なくともこの作品には多少の救いはあったように思えます。<BR>本作品読了後は、是非「世紀末の隣人」をお薦めします。
これまで重松清の小説を何冊か読んできましたが、一番重たい作品かも知れません。救いのない悲惨な状況に追い込まれていく15歳の少年が主人公です。題名にある通り、歯車の回転の狂い、積み木の崩れ方が疾走感を持って迫ってきます。ヒロインの女の子の背後にも切なくてやりきれなくて声も出ないような漆黒の闇があります。天童荒太が描く「永遠の仔」(幻冬舎文庫)、「家族狩り」(新潮文庫)に合い通じるような、この世界の不条理がたくさん出てきます。結末をどう思うかは各々違ってくるでしょうが、本当にささやかな「救済」の予感めいたものが暗示されているけれど、それでも・・・コトバにならないいろいろな思いが心の中を駆け巡りました。