BLOOD+という作品をを見る上で予習のために読む、というのも良いかもしれません。押井守監修とありましたから数年前の劇場版とこの小説がBLOOD+のバックボーンを担っているだろうと思います。<BR> この小説を読む事によって実は主人公.小夜の謎が少し見えてくると思います。<BR> 彼女が生まれながらに背負った哀しい運命を知りながらBLOOD+の展開を楽しむ事、というのも一興ですね。
映画”Blood the Last Vampire”の原作本と思ってしまうかもしれませんが、同じ設定下における全く別な物語です。<BR>ジャンルとしても、伝奇アクションである映画作品に対しこちらは青春ものの骨格+伝奇薀蓄。さらには学生運動真っ盛りという時代設定のため、かなり独特なワールドが展開されています。<BR>基本的には若者の無力感とか閉塞感、青春ってそういうものだったなあ、という作品なので、自分が「頭は悪くないけれど生きるのはそんなに上手じゃない、ちょっとひねた若者」だと思っている人ならいい感じに読めるんじゃないでしょうか。<BR>普通に社会的に成功してしまった人には、「なんのこっちゃ?」という作品に感じられるのでは。
押井守は言うまでもなくアニメ作家だが、困ったことに、ほとんどの小説家より文章が上手い(「すべての小説家」と言わないのは、単に「すべての小説家の文章を読みくらべたわけではない」からだ)。特にこの『獣たちの夜』は、角張った漢語を多用しつつもテンポが絶妙なので読みやすく、文章を読んでいるだけで心地よい。<BR>物語を支える「理屈」を語る部分が多いことをもって本作の欠陥とするむきもあるようだが、そうした要素は本来、特にSF小説という分野では一つの醍醐味とすべきものだろう。逆に言えばそうした要素がなく、ストーリーとアクションだけで構成された小説なら、漫画にした方が面白くなる可能性が高い。アニメ作家であり、漫画原作者でもある押井守がわざわざ小説を書こうというのに、「絵のない漫画」の類(実際、そういう「小説」も多い)を書くはずもないことは自明だろう。<BR>自分の知らないことを知っている人を見ると反感をもつ人も多いので、そういうタイプには不向きだが、そうでない人にはおすすめする。特に「日本語の文章を読むこと」が好きな人ならまず間違いなく、幸福な時間を過ごせる1冊だ。