昨年(2004年)の冬のクリスマス・シーズンに訪づれたヴェネツィアの町は美しかった。朝方はテレビのニュースでヴェネツィアのアックア・アルトによる浸水が報道されていたが、私達が到着した昼には大分と水が引いていた。それでも町行く人々は長靴かビニール袋を靴にかぶせて歩いていたのである。私達も渡しの小船の中でビニールを靴にかぶせるのに余念が無かった。そういう訳で、ヴェネツィアに対する第一印象は「住みにくそうな町」であった。しかしながら、ゴンドラに乗り運河を巡り、小さくてかわいい橋を渡り、狭いが小奇麗な道を歩くにつれ、町が小さくて美しく整っていることに気が付いた。サン・マルコ広場もすばらしかった。そして何よりも感動したのが、夕暮れのリアルト橋がからの眺めである。サン・マルコ広場から商店が立ち並ぶ小道を抜け、視野が広がった目の前にリアルト橋が運河をまたいでいる。その橋の上に立って観る眺めは何とも幻想的であった。寒い冬の張り詰めた空気、夕暮れ時の淡い光、徐所に迫り来る夕闇、運河の両脇に立ち並ぶ建物からの光。この本を読んでいると、自分の体験した景色、本から想像できる景色がイメージとして頭の中に浮かぶ。さすがに一日観光だけだったので、通りや建物をじっくりと観察する時間もなく、ましてマリア様の存在にも気がつかなかったのであるが。本書はヴェネツィアという都市の徹底研究の書である。もし再びヴェネツィアを訪づれる機会があれば、是非この本を携えてこの町を散策したいものである。
本書を片手にヴェネツィアを3日間かけて歩きました。書店でよく見かける旅行ガイドにはないヴェネツィアの魅力が、著者の選んだ13のコース別に紹介されています。<BR>ヴェネツィアの魅力は、複雑に絡み合う狭い路地や、広場、教会、運河、橋、館等の建築物、そしてこれらにまつわる歴史にあると思いますが、実に詳しく説明されています。<BR>サンマルコ広場、リアルト橋等の、ヴェネツィアのいわゆる観光名所以外のヴェネツィアを見たいなら、その歴史を知りたいなら、ぜひ本書を持ってヴェネツィアへ。
ヴェネツィアは、一度訪ねたことがある人は、またもう一度来て見たい、と思わせるような不思議な魅力がある街である。大小の運河に囲まれた「水の都」は、車の全くない街で、観光客は水上バスと足で歩き回ることになるが、その<BR>際の「案内役」として、この本に優るものは無いだろう。<P> 著者により紹介された13の探索ルートを辿ってゆくと、歴史的な建物から、数多いカンポ(広場)、何気ない建物まで、建築史家としての著者の目が行き届いており、またその解説が大変興味深い。各ルートが目で辿れるイラストの地図と、100点以上におよぶカラー写真により、まさに実際にこの街を歩いて訪れたような体験ができる本である。<P> 著者は、「30数年に及ぶヴェネツィアとの付き合い」になる、ヴェネツィアの第一人者の陣内秀信氏で、同氏による「ヴェネツィアー水上の迷宮都市」<BR>(講談社現代新書)もあわせて読まれると一層、この街の魅力の虜になることでしょう。