角川版の“完結篇”から5年、忘れたいのに忘れられない苦い想い出のように刊行されました、犬狼/ケルベロスにまつわるお話です。<BR>時代から拒絶された組織“首都警”の滅びの闘いとなったケルベロス擾乱、その生き残りである二人の男の物語です。<BR>一人は組織を裏切るかのように、見捨てるかのように去っていった男、もう一人はその逃亡の真意を問い、けじめをつけさせようと追い続ける男・・・。<BR>映画「紅い眼鏡」同様、昔の思い出を引きずり続ける男たちの姿は、重苦しく、物悲しくも時に滑稽で、観る(読む)者に喜びなんぞは与えてくれません。<BR>作り手側同様、この物語に魅入られてしまい、半ば自虐的にも“覚え続けている”人にしかお薦めできない作品です。
空気感を感じられる絵。<BR>そして、静かに進む物語。<BR>素晴らしい!!
押井守監督の実写第一作『紅い眼鏡』(1987)に発した、ラジオドラマ、漫画、フィギュア、映画、アニメなど複数のメディア(小説はまだだろうか?)をまたがる「ケルベロス」伝承群。本作は『犬狼伝説』以来、しばらくぶりの漫画篇となった。<P>組織解体令を拒絶し、悲壮な決起籠城戦をむかえた国家警察「首都警」からの国外逃亡者がいた。重く大きなトランクを手に、中南米、東南アジアをめぐり歩く男は、なにを追い、そして夢みたか。<P>語らずとも物語る数々の情景は、静止画ながらフィルムを観ているかの気持ちへ誘う。『紅い眼鏡』がそうであったように、作家の心象が色濃く重ねられた仕上がりには、好き嫌いも生まれよう。演出の試みがすべからく正鵠を得ているとも言い切れない。<BR>だかしかし、くりかえし再読に耐えうる、これは堅牢な連作短編集だ。