運命を変えるため、主人公の亘は、幻界へと向った。<BR>旅を続けるうちに、彼は自分自身と向き合っていく・・・。<BR>その姿。その想い。そしてテーマはすばらしいと思う。<BR>終盤では、自分自身と向き合って考えさせられるだろう。<BR>自分は思わず共感し、感動もした。<P>しかしファンタスティック世界のクセのなさは少し気になるところだった。もう少し真新しさがあってもいいのではないかと。<BR>文体から想像出来る光景は、どうしても世界観それ自体に興味を引かれるものではなかった。ファンタステックの世界に圧倒されなかったというか。<BR>作者は主人公がRPG好きという設定を生かし、わざと突出した個性を宿らせず、やや既視感のある世界観にしあげたのかも知れないが、特にRPGファンでない自分には少し物足りなかった。<P>物語のキャラクターたちは魅力的で、全編通して読み終わった後には、気に入ったキャラが出来ると思う。<BR>読後感もよく、主人公たちと幻界を旅した気分に浸れるよい作品だと思った。
主人公ワタルが現実世界の悩みと苦しみを解決する為に幻界(=ビジョン)を旅する壮大な物語です。<BR>読まれた方それぞれにいろいろな意見があろうかと思いますが私としてはハッキリ言って傑作と感じました。<P>いつもの事ながら宮部みゆきさんは今の社会の問題点を鋭くえぐります。さらにそこに登場する人物の描写がハッキリしており、この事はこの作品でも例外ではありません。<BR>今回の舞台の幻界はまさにそういう部分を自由にふくらませられる舞台として著者が用意した装置だと思います。<BR>現実の世界での人物や設定の描き方はともすると〝非現実的〟となり、そこに制限というか限界が発生してしまうのですが、物語中で言うところの現世のヒトの想像が作り上げたという幻界という舞台では様々な事を自由に描ききれる魅力があるのだと思います。<BR>これを称してファンタジーとも言うのだと思いますがこの作品への引き込まれ方はその読みやすい文体と併せて、決して子供向けのゲームやファンタジーではないところにあるのだと思います。<BR>おそらく読まれた殆どの方がワタルをはじめとした魅力的な登場人物の発言や行動に少なからず決して他人事ではなく〝ドキリ〟とした経験を持った事と思います。<P>ワタル、ミツル、ミーナ、キ・キーマ、カッツ、ロンメル、ルウ伯父さん....登場人物の名前を思い出すだけで、爽やかな感動を思い起こさせてくれるこの雄大な叙事詩に★5つ、満点を献上します。
これがもし宮部みゆき作でないならばもっと評価を甘くしてもいいのだけれど、彼女が書いたにしては随所に甘さが目立つ。上巻を読む限りではもっとシビアな展開を期待したが、なんだか無理に軟着陸させたよう。中盤ではどうしても入り込めずぼんやりした印象だった。既存のファンタジーとスティーブンキングを足して薄めたような仕上がり。随所に宮部みゆきならではの面白さが光るだけにもったいない。ファンタジー恐るべしといったところか。