繊細な四季の変化に育まれてきたせいか、雨にしろ風にしろ、そういう自然現象に対してつけた粋な「名前」が日本ではことに多いと思う。この本はそういった空の表情を、美しいカラー写真付きで紹介するいわば図鑑のようなものである。が、理屈っぽさはない。むしろ休日の午後にベッドに寝転がりながら眺めるような、心を解き放つための本といったおもむきがある。空に浮かび、流れて散っていく雲たちを集めた「雲の章」のほか「水の章」、「氷の章」、朝焼けや虹・蜃気楼などの「光の章」、「風の章」、二十四節気などを紹介する「季節の章」と6つの章に分かれている。この本を読んでいると、自分が普段、外に出ていながらいかに空を見ていないか、気候の変化の瞬間に鈍感か思い知らされる気がする。それがこの本の狙うところなのだろう。いかに美しく印刷された光や風や水も、自らで見て聴いて、嗅いで触れるそれには到底かなわない。
写真を撮るので、参考になると思って注文した。もちろん写真の参考書としても使えるが、四季が豊かな日本の風土の中で過去の人が自然を観察し、そこに思いを込めて色々な名前をつけた。心の描写の投影である。とかく、せわしなくあくせくしがちな日常生活の中でふと、自然に目を留めゆったりした気持ちになった子供の頃を思い出させてくれる。<P> 写真のサイズがもう少し大きくなれば尚よかった。
何もしたくない午後、この本を開いてボーとすると楽しい。春、髪を乱す小憎らしい風に名前があることを知り、夏、流れる雲に呼び名があることを知る。秋、雫の輝きにはじめて気づき、冬、雪の音を聴くことができる。季節の風景写真と添えられた美しい言葉。何もしたくなかったはずなのに、散歩に行きたくなったり誰かに季節の言葉を添えた手紙をだしたくなったりする。リラックスできる一冊。