本書は哲学の入門書として非常に優れているように思います。「哲学科って何してるの?」、そんな疑問を持っている人には特にお勧めできる本です。中でも、大学に入学してはじめて教養の選択科目に「哲学」と書いてあるのを見た一年生が読むと、「哲学」というジャンルがどのような問題を扱っているのかということが大まかに理解できて便利だと思います。<P> また、これは野矢氏の書く本全体にいえることなのですが、本書もその語り口は極めて平明で、単純にわかりやすさという点からいえば、他の哲学書のそれとは比べ物になりません。もちろん「わかりやすい」ということが必ずしも良いことだとは思いませんが、しかしそれでもなお、本書のような中身のあるわかりやすさは入門書には必須のものであり、そういった意味で、入門書としての本書が持つ役割は極めて大きいと思います。<P>
「哲学」という分野に足を突っ込む時、一体わたしたちのアタマの中は、「日常」とどう違ってくるのか。「日常」から一歩先の考え方をすると、どういうことが見えてくるのか。<BR> この本は、そうした「日常」的な感覚から入っていきます。専門知識は要らないし、変に気取らなくてもいい。時間、心、他者、言語・・・こうした哲学の伝統的な問題について、対話という形式を用いて、2人の人物が互いにああだこうだ言いながら進みます。そして、ああだこうだ言いながらも、明確な「答え」が出るわけでもない。<BR> とかく「答え」があるものだと思ってしまいがちな姿勢に対して、「哲学するとは?」ということを自ら実践している一冊です。
いわば、哲学者や哲学の流派の名前を極力出さずに書かれた哲学入門。唯一出てくるのはラッセルのみ。<BR>だが、そんな本の中に、プラトンやカント、ハイデガーetc...の考えてきた、存在とは何か、時間とは何か、という疑問、それにまつわる論争のエッセンスが詰まっている。<BR>これほど哲学のエッセンスを凝縮した本はない、名著です。