はじめ図書館から借りて読んでいたのだが、あまりに良いので購入した。<BR>まずこの本とのつきあい方だが、「読み物」だと思うと期待はずれだろう。手っ取り早く「ラテン語って?」というのを知りたい、と思ったら逸身氏の本の方が向いている。この本はきちんと一通りラテン語文法を学ぶ本である。しかし「教科書」ではない。いわゆる練習問題の類いはひとつもないので、現れてくる語彙は限られているし、巻末に索引も単語集もついていない。じゃあ何なのか、というと、ちょうど「講義」のようなものじゃないかと思う。(何の科目でもそうだが)講義にすべてを期待するのは間違いだ。しかし、実に説明が上手だし、「何々の活用を学べ」のような突き放したところはない。限られたスペースで読者の理解を助ける様々な工夫がしてある。この本のそうした性格をきちんと理解すれば、大変優れた本であることがわかるだろう。私のように、自分の仕事・専門とは関係なくラテン語に興味を持ち、ラテン語を学ぶためにまとまった時間を持てない人には特に有用な本だと思う。私は最近いつも持ち歩き、何度も読み返している。(新書判はこれが容易だからすばらしい。) さすがに基本的な活用のパターンは頭に入ってきた。そろそろ「演習」を始めようか、と思っているところである。
基本的には、逸身喜一郎氏の『ラテン語のはなし』と同じく“通読できるラテン語文法”を基本方針としていると言ってよいと思うが、よく言えばマジメ、悪くいえばカタすぎ。<P> つまり、ラテン語の一見複雑な文法事項について上手な説明を与えて、それほど複雑ではないと示してみせてくれるところが随所にみられるが、しかしこの本が想定している読者(つまり、まったくのラテン語初学者で、ラテン語を今から勉強するためにこの本を読む人)にとっては難しすぎたり、退屈だったりするのではないだろうか。『ラテン語のはなし』の話が即効性のある文法説明は少ないけど退屈させない読み物であるのとちょうど正反対であろう。 <BR> だから、文字どおりに「はじめて」の人には薦められないが、逆に一通り文法を終えた人が復習するには最適の良著であると思う。
ラテン語。西洋人の「学校時代のイヤな科目」としてもよく挙がるので、<BR>西洋人が嫌がるなら日本人にはもっとムリな気がしてしまう言語である。<BR>しかし、文法は、変化がとにかく多いけど、けっこうきっちりしてるので、<BR>面倒なだけで実は思ったより学習しやすかったりする。<BR>そんなラテン語の初級文法を、初学者むけにですます調で、雑学的知識も<BR>交えながら詳しく語ったのが本書である。<BR>ラテン語の参考書は、大型書店にもほんのちょっとしか置いてなくて、<BR>しかも妙にとっつきにくそうだったり高価だったりするのだが、<BR>これは新書、しかも講談社現代新書というメジャーな新書であるので、<BR>簡単に、安く手に入るのがうれしい。<BR>なるべくおもしろく、わかりやすく書こうという意図が感じられるのも<BR>初めての人にはうれしい。<BR>例文も多く、和訳と単語の解説がついている。<BR>車の名前など、日常触れるものに言及するなど、読者の興味をひくように書かれている。<BR>文法説明はかなりくわしく、しっかりした教科書にも書いてないことが<BR>載っていたりするし、用法の説明もていねいなので、中級以上の人にも便利かと思う。<BR>しかし文法の説明がぎっしりで、しかも品詞別に進むので、いきなり名詞の変化が<BR>全種類出てくるなど、けっこうおなかいっぱいな感じで時折イヤになるかもしれない。<BR>また、言語学的な説明や、英文法への言及もあるので、西洋言語の文法の知識が<BR>けっこう必要とされる。<BR>副読本のようにして使うと良いかもしれない。ラテン語入門&復習におすすめの書。