この本の旧版が出版されたのは1989年のこと。社会人一年生で中国のこともよく分かっていなかった小生ですが、「なんて面白い本なのだろう」とただ素直に感心したことを覚えています。あれから16年、今改めて「完全版」を読んでみて、その視点と切り口の鋭さに思わず唸ってしまう思いです。<BR> 本書は、漢や明や太平天国、そして更には共産党政権などの成立過程や社会的背景を解説し、これらの政権が何れも社会的なアウトロー集団を中核としていたことを説き明かすものです。大盗賊列伝としても面白く、気軽に手にする歴史読み物としても十分に楽しめる出来栄えです。<BR> さらに本書は、そうした面白さの領域を超えて、「何故そうしたアウトロー運動が本格政権に発展できたのか」という観点から、中国史を通じる社会的な特性に迫っています。今日の共産党政権の捕らえ方という点でも歯に衣着せぬ問題提起を行っており、中国ないし中国人というものの本質を鋭く抉り出しているように思います。<BR> 著者はエッセイストとしても高名な方だそうで、その語り口の洒脱さにも特筆すべきものがあります。登場する人物の数や解説の程度など、詳しすぎず少なすぎず、一般向けの本としての塩梅は絶妙です。これほど楽しく中国史の本質を垣間見られる本というのは、なかなかお目にかかれないのではないでしょうか。およそ中国に関心をお持ちの向きには、是非一読をおススメしたい一冊です。
ここでいう「盗賊」とは、武装した人々が集ってできた農村・都市を略奪する一団のことである。山に巣窟を構えれば山賊、沿岸や島で仕事をすれば海賊、騎馬隊形式なら馬賊と呼ばれる。失業者や、食いつめ者はいくらでもいたので、すぐに人が集まって大人数になる。それにPR係のインテリが加わると、一つの地方を支配することもある。さらに中国全土を統一するまで大きくなったのが漢の劉邦、明の朱元璋である。成功するのは一握りで、李自成、洪秀全(太平天国)は中途で挫折する。<P> さて、きわめつけが毛沢東だ。彼は師範学校出のインテリだが、中国伝統の盗賊の手法で見事に中国全土を平定したのだ。しかも盗賊らしく、その後は功臣・知識人を追放し、自分の妻(江青夫人)に好き勝手をさせている。<P> 本書を読んで、中国の正史のいいかげんさも良くわかった。小説を素材にしたりするからだ。<BR> <BR> 著者の文体は、とぼけた皮肉があって親しみが持てる。例えば、「盗賊が人気を取るのは比較的楽である。モトデがかからない。悪いことさえしなければ「盗賊だのに金も女も取らない」と人気があがる。」といった調子である。
マルクスレーニン主義の文献というのは いまだにイデオロギーの<P>部分しか書いていませんが、そんなものは ほんの上澄みで 中身は<P>中国でも 北朝鮮でも、もしかしたら ロシアでも こんなものではないか<P>そんな気がします。中国について考えるときによむべき本の<P>1つだと思います。