読み終わっての正直な感想は、確かに「面白かった」。<BR>全てにおいてキャラクター性は良かったし、バラバラに散りばめられた話の流れも実は一つのテーマに基づいて一環していて訴える所はつかめたので、純粋な面白さではかなりのレベルだと思った。<P>しかし、それだけでは俺としては手放しで高評価をあげれるものとは思えない。「セカイ系」のライトノベルにおいて名作には笑い、涙、哀愁などと言った感動できるが少なからず必要だと思うのだ。<BR>その点で言うなら、この作品は全く感情を揺り動かされる所がなかったと言える。<P>キャラクターが感情に訴えかけるより先に作者の考える哲学的な理論が先に立って解説を始めてしまうからだ。<P>そしてその理論の根底にあるものは少なからず最近の世の中に対して若者が一度は抱く疑問であり、退屈な日常に変化を求める一市民の理想で、そこで脳内に発生した都合の良い理想のセカイを書き表してるに過ぎないのだ。<P>と、自分にこの作品が合わない理由を書いたが、これらの欠点は読み手によっては最高の作品と言える要素になるだろう。<BR>作者の理論に近いセカイを求めている人はこの日本に多く存在するはずで、それらの人にとっては理想のセカイが作中で繰り広げられているからだ。<P>それに、作者の理論に共感できなくてもこの作品中の世界の展開には一度嵌ると最後まで読みたくなる不可思議な魅力があり、新しいジャンルのライトノベルとして読むならば最初に述べた通り面白さではかなりのものなので、興味を持った方には是非読んでもらいたい一冊だ。
強烈に読み手を選ぶ作品だとは思います。が、その分「月姫」「Fate」等の他の奈須作品をおもしろく感じられた人ならば文句なしに楽しめるでしょう。<BR>「月姫」等をプレイしているならば、魔術に関する設定、登場人物等、繋がっている部分もあるので、より世界の広がりが感じられ、楽しめると思います。<P>自分は既に他の奈須作品を経験しているのでまっさらな観点からは読めませんでしたが、もし空の境界が初めて奈須作品となるならば、やはり物語の背景、キャラの魅力等を理解しづらく、おもしろみ減少かなぁと。
他の方のレビューでも頻繁に言われていますが、この本は読者を選びます。<BR>この本の魅力を一言で言うなら、文章でも人物でもなく「世界観」だと思います。<BR>この本の中で起こる事柄や登場する人物は、例外なくこの世界観の中でのみ存在できる物ばかりです。<BR>現実とは異なる設定で構成された世界の中で、物のあり方や存在について考察が展開されていく。その過程で、様々な登場人物たちが物語を紡いでいく。<BR>この設定に馴染めるか否か、それによって☆一つ~☆五つまで評価が分かれるかと。この世界観にはまった人にとっては、紛れも無く名作です。<BR>如何に巧妙で奥深い文章を書くことが出来る作家の方でも、基本となる世界構成が本の面白さを決めるのでは?<BR>そういう意味で、私は何かが突き抜けている作品にこそ魅力を感じます。