『企業参謀』の続編である。前作ではPPMなどのいわゆるコンサルタント技法が中心に書いてある。よって、現在の戦略論の進化からすれば、PPMなどはもはや陳腐化している感も否めない(もちろん『企業参謀』が書かれた時点では、間違いなく世界でも最先端の内容であった)。<BR>それに比べこの『続・企業参謀』は本人も言っているが、応用編、というか(技法ではなく)思考法に力点が置かれているため、現在でもまったく色あせていない。特にKFSや戦略的自由度は他の学者系の本には書かれていない、大前さん独自の思考法で、「競争優位を築きなさい」「差別化しなさい」「コストダウンしなさい」と書かれている学者の本に比べて「ではどういうふうにそれらを行うのか?」についての解答となっている。<BR>薄い本であるが、この本を読んだだけでも、相当戦略が練れるようになる。企業人だけでなく、起業家も自社の強みを把握し、大企業に立ち向かうためにも必要な思考法である。<BR>ぜひ一読を勧めたい。
前作では『戦略的思考』の優れたるところを徹底的に解説。我々がそれを身につけるための啓発と、具体的方法を惜しげもなく記した。経済・経営、政治を的として実践して見せたところも良い。単純に格好良い。くだらない啓発モノ、例えば『ポジティブシンキングで未来を切り開こう』とかいう豚の糞にも劣る文章など、著者・大前氏はかけらも使わない。出版物に限らず、戦略的思考を我々の目の前で、幾度となく実践してみせた。ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』よろしく、以後、多数の著書と世界的活動でもって、我々をリードしようと試みた。『ボーダレス・ワールド』『新・国富論』『新・資本論』などを読めば、皆さんもご理解いただけることと思う。選挙に出馬し敗れてしまったが、それでも“戦う経営コンサルタント”は眠らない。<P> ……余計な話ばかりで申し訳ありません。なにぶんハタチのとき、この『企業参謀』を読んで以来、世の中の見方・考え方が劇的に変化し、文字通り生まれ変わった経験を持ちますゆえ、喜びと尊敬を兼ね、しょうしょう大げさに語ってしまいました。しかし、賛同してくださる方も、たくさんいらっしゃるものと、信じております。<P> 前作をさらに発展させ、当時日本にダメージを与えた石油危機から、日本企業がいかに生き延びるか、そして成長するかを説いています。経済動向の分析から、企業参謀の心構え、新しいアイディアを創出する方法、企業戦略4つの基本など、少し難しい文章もありますが、質・量ともに100点満点です。特にビジネス・システムとKFSの発想は面白く、競争戦略論で有名なマイケル・ポーターの『価値連鎖』と比較すると、さらに発展性があると思います。ポーターの本よりも出版が早かったところなどは、さすがですね。<P> 現在はプレジデント社から、前作と本書をひとつにした新装版が出ており、ハードカバーで格好良い表紙デザインですが、値段にちょっと引っかかりを感じる方は、この文庫版に挑戦してみてはいかがでしょう。まずは前作を読み、さらに勉強したいと思ったら、本書を読む。<BR> 内容も変わらず……と思ったら、プレジデントのほうは、巻末に先見性の技術という項目が設けられていやがる! その部分が残りに該当するのか? さすがに考えてやがるぜ……この部分は『考える技術』にも同じ内容のものがあります。どちらを選べばよいかは、僕には決めかねますが、とにかく、どちらか一方は読むべきです。<P> 『生活に影響を与える物事はたくさんあるが、時として、たった一冊の書物が、人生を劇的に変貌させることもある。』<BR> ゲーテの言葉だったと思います。
大前 研一氏のロングセラー。文庫なので入手性も良く、持ち運びにも便利。<BR>企業参謀の続編である。<BR>四の五の感想を書くよりも、これはと思った言葉を引用した方が良さそうだ。<BR>p.16<BR> 『そこには願望と期待の入り交じった”明日こそは業績回復”曲線(マッキンゼー社内では、これを密かに「ホッケー・スティック」と呼んでいる)が例外なく示されるからだ。』 <P>ホッケー・スティック曲線とは、「く」の時を横倒しにしたようなもので、今まで右肩下がりで来たものが、ある日突然に屈曲点を迎えて、右肩上がりになるようなグラフ上の線のことである。<BR>合理的な理由なしに、このような屈曲点など現れないはずだと。<P>p.55<BR> 『一方、若手の中には、過去の過保護が依然として続き、トップが何かしてくれるであろう、という甘い期待から、自ら進んで維新を敢行するプログラムも勇気も持ち合わせていない人々が充満している。<BR> 経営がいくら複雑になったからといっても、本質的に30代の人々に不可能な事柄はほとんどないと思われるのに、ジッと10年、30年後の出番を待っているのであろうか。』 <P>実際には、30代が動かすことが可能な新世界と、連綿と世襲されている旧世界があるんだろうなぁ。<P>しかし、著者が書いているように、旧世界を動かす必要があることなど、通常のビジネスではほとんどないと思います。<P>p.64<BR> 『こうした状況に対応するためには、<BR> (1)まず判断を従来よりも分析的・科学的に行うこと<BR> (2)分析を行う力を内部的に付けること<BR> (3)判断を個人または特定職制のもの、という認識から、会社全体のものであるという認識にかえること<BR> (4)さらに、こうすることによって、一度下った決定でも、誰も当惑することなく、逆転できるようにしておく...』 <P>一言で言うなら、無責任体制からの脱却かな。<P>p.171<BR> 『硬直状態...に活を入れ...新機軸を求める方法を考えたのである。<BR> すなわち<BR> (1)考え方の転換<BR> (2)戦略的自由度<BR> (3)技術的ポートフォリオ<BR> の三つのアプローチを私は使っている。』 <P>分析とかブレークダウンしたある面愚直なアプローチでも、カンに頼る(思考停止になる)よりも、圧倒的によいということかな。<P>あとがきの一番最後<BR> 『ごく少数の読者は、ものの考え方についての記述が非常に参考になった、と言ってくれた。本書は、この少数派の読者を対象としている。』 <P>ツールは必要に応じていろんなものをパクればいいが、考え方が無い・考えてないやつは、パクることもしないということかなぁ。<P>もっと読みたくなったでしょ?