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遠い太鼓 ( 村上 春樹 )

 村上春樹さんの小説はそれなりに読んでいましたがエッセイはこれが初めてでした。旅行記やエッセイとしてはもちろんのこと、彼の小説によく出てくる「料理」「場所」「酒」なども、ここからかぁ~!と感じられます。つまり、村上春樹さんの「メイキング本」的な見方もできていいとおもいます。こういう旅や捉え方ができる人が本をかけるのかな、と思いました。いいことばかりでなく正直なところも小説同様に読むことができます。村上小説読者必読本(小説のネタがばれて面白くなくなってしまうかな)。

パッと見たところ旅行記だなと思い、深く考えずに読み始めたのですが、何度もホロリとしてしまいました。<P>まだまだもがいていて、それでも出口が見つからない、そんな気持ちを持つ30代の読者に勇気を与えるのではないでしょうか。<P>奥様との会話。海外での滞在の仕方もとても素敵だと思います。

これを読んだ数年後、偶然にもギリシャに長期滞在の旅行に出ました。そのころは、ただ単に、ギリシャを中心としたガイドブック的なものとしてとらえていましたけど、その後、私自身がアメリカで生活するようになってから、この本に対しての私なりの解釈が出来るようになりました。。 文中、著者がみせる「骨の髄まで日本人」(たとえば生のSalmonの誘惑に勝てずにさしみで食べちゃった、とか七輪で魚を焼く、とか。)の描写が、アメリカで暮らしていた私にとっては悔しいほど鮮烈で詳細で残酷で、まるで自分もそうしているかのようで(できないから残酷!)。ただ単純に、あそこの土地がこうで、食べ物がああで、景色や人がこんなんで、というものではありません。InternetやE-Mailで世界中のボーダーが外れたかのように思える今の時代でも、それでも、個々の中に息づいている生物としてのIdentityやRootsを、遠い場所で気づかせてくれる、一冊です。今現在、海外にいらっしゃる日本人に、ぜひ、読んでもらいたいですね。それでどうこうしてほしいわけじゃないけれど。

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