著者がその場その場を見てきたかのように書かれているのでとても読みやすい。見た目だけではなく伝説となりつつある白洲氏の言動は読んでいて爽快。この本はそんな白洲氏のスゴい自慢だけではなく戦後日本が歩んできた時代背景をも克明に記しています。学校の社会の授業で習った数々の出来事に白洲次郎という人が関わっていたことに驚くと同時にそれを知らない自分に愕然としました。<BR>この本をきっかけに日本の歴史や政治にも興味が出てきました。<BR>読み終わった今は日本人にもこんなステキな人がいたことをもっとみんなに教えたい気持ちでいっぱいです。
まずはこの本を読んで改正論議たけなわの憲法について考えてみたい。<BR>賛成も反対も抜きにして、どのような経緯で成立したか。<BR>戦後の混乱期において、日本人であることを貫いた人にしか私は興味がない。<BR>むやみに神格化するでもなく。こうした人がいたことを私は率直に誇りに思う。
白洲次郎氏の生き方は確かにカッコイイ。しかし、この本の白眉はそ<BR>こにあるのではなく、憲法の制定過程を生々しく見せてくれたことだ<BR>と思う。<BR>憲法を取り上げるにも色々な切り口がある。「私たちが書く憲法前文」<BR>のような切り口も面白いと思ったが、憲法制定過程を通して考える<BR>というのもその一つだろう。<BR>よく「おしつけられた憲法」というフレーズが使われるが、どう「押<BR>し付けられた」のかということがよくわかった。マッカーサー草案を<BR>日本側に提示したときの情景など、わが国の現行憲法の成立過程のこ<BR>とながら、まるでヤクザのケンカの「かまし一発」のような感じでア<BR>メリカも必死だったんだなぁと苦笑してしまった。<BR>ただ、「押し付けられた」だけでなく日本側としてそれを国際裁判に<BR>訴える道もあったにもかかわらず、ソ連の介入をおそれてそれをしな<BR>かった。また、米側とタフな交渉をした白洲次郎本人が「押し付けら<BR>れたとしても良いところは良いと認めるべきだ」との意見を持ってい<BR>た。この2点は非常に重要な指摘だと感じた。<BR>文句なく面白い一冊ではあるが、次のようなことが疑問として残った。<P>1つは官僚でも政治家でもない、強いて言えば財界の人間である白洲<BR>次郎が終連次長という今で言う政務次官のようなポストに就いたのだ<BR>がそれはレアケースだったのか、それとも普通なのかがわからなか<BR>った。<BR>2つめはGS(民政局)が共産主義寄りだと書いてあるが、松川事件や<BR>下山事件がGSの陰謀だとする説が根強いことと矛盾しないのか。<BR>2点とも私が不勉強なためで、本書の価値を下げるものではないこと<BR>を強調しておく。