書かれてから結構な年数が経っているのでその点を差し引いても、やはり必読の書。脳科学の理解に欠かせない基本的な伝達物質のしくみと、それに対応した薬理の解説がわかりやすい文章で書かれている。私はこの本を足がかりに、脳科学にのめり込みました。
脳は数多くの物質によって有機的に構成され、情報を記憶・処理している。当然、特定の物質の多い少ないが、脳に影響を及ぼすこともある。それを丁寧に解説した一冊。例えば、以下のような具合だ。<P>・眠りたくても寝つけないときは、メラトニンのもとになるトリプトファンを多く含んだ牛乳、ピーナッツ、アーモンドを食べるとよい。寝つきがよくなるはずだ。<P>・やる気のもとになるチロシンを多く含むのが筍。チロシンが活用されるためには糖類も同時に摂取するこが必要で、タケノコご飯が最適。<BR>・ストレスを受けると血液中から亜鉛が減り、銅が増える。ストレス耐性を高めるには、亜鉛を多く含んだ「牛乳」「豆類」を取る。亜鉛は現在でもっとも不足しているミネラル。<P>また、ストレスで「血液・脳関門」の機能が100倍も弱くなる可能性がマウス実験で確認されたそうで、これも怖い話だ。強いストレスがあると、大切な脳を守る関所である「血液・脳関門」の機能が低下し、通常では絶対に侵入しない物質が脳内に入り込む可能性がある。その知識もこの本ではじめて知った。強烈なストレスがあると頭がうまく働かない経験が誰にでもあると思うが、脳関門が機能低下し、通常はない物質が脳内に侵入し、有機的な反応システムに影響を及ぼしているかも知れない。
よく、うつ病や自律神経失調症に関する本で、神経細胞とシナプスの図が載っていますが、何で神経細胞で電気信号として伝わる情報が、シナプスで神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン等)に役割が引き渡されて、また化学物質が神経細胞の受容体に取り込まれることによって電気信号に戻るのかという根本的な疑問(脳科学を知っている方には常識なのでしょうが)があったのですが、本書の前半部分を読んで氷解しました(要点は、食塩の組成物質であるナトリウムイオンと塩素イオンが絡んでいる、詳しくは本書を参照のこと)。<P>ざっと列挙すると、モノアミン、セロトニン、炭酸リチウム、ベンゾジアゼビン、ドーパミン、アセチルコリン、カフェイン、プロスタグランジン、アスピリン(ア!セチルサリチル酸)、メラトニンなどの脳内伝達物質や薬品や嗜好品に含まれている物質、アミノ酸、糖類、ミネラル、カプサイシンなどの栄養素が脳でどのようにふるまうのか詳しく解説されています。<P>同著者で同じくブルーバックスから出ている「脳の健康」と併読することをお勧めします。