とにかく全編、ジャズ喫茶の親父にしてジャズ評論家の寺島さんのジャズに対する愛情が伝わってくる。ビル・エヴァンス、リー・モーガン、クリス・コナーなどのいわゆる万人が認める名盤も取り上げられているが、多くは現役のジャズメンたちの現代のジャズ・アルバムに多くのページが割かれている。そうです。ソニー・ロリンズもいいけれど、現在のジャズを聴いて欲しいという寺島さんの思いがあふれているいる一冊。値段も安いし、読んで面白い。(松本敏之)
ジャズ喫茶三昧だった学生時代から20年近くたつ。今も聴きたいけど、90年代の録音はどれも知らない。といって、ジャズ喫茶で長い時間座っている余裕もない。この本に出会い、知っている曲やプレーヤーをたよりにしたり、メグの親父が「エクスタシー」を感じたのなら、とCDを10枚まとめ買いした。どれもいい。歴史的名盤はもうさんざん聴いた私にとって、新しいのを中心に紹介してくれる本書はありがたかった。これぞインスタントジャズ喫茶的効果だと思う。
この人の文章フレーズは随所で楽しい。タイトルからして<P>「JAZZはこの一曲から聴け!」だ。何やらクサい。若いヤツがこのタイトルだったらゼッタイ買わない。オジさんが言うから許せる。ジャズにシャカリキ、猪突猛進のオジさんが言う場合には、わらって許せる。大まじめ、シャカリキ、チョトツモウシンもウン十年たつうちには、くたびれてくる。それで普通ならアホらしくなるが、アホらしくならず、なおドンキホーテよろしく突っ張り、突っ走るところがこのオッサンのエライところ、ホントにバカバカしいところ、かつ消費税込みで924円出してみようかと思うユエン。ジャズ・ドンキホーテもウン十年続けば、おのずとトロリとした味(古漬けの味?)も生じてくる。 コルトレーンがサイコー、何ちゃら言う歌姫となら心中してもいい、とジャズ評論界のケンイのたまったところで、所詮他人の感性のハナシ。フンフンと聞き流すか、片腹イタイと笑い飛ばすか・・・。ごタクセンをシャッチョコばって承り、音盤買ってみたがいいが、とんだ食わせもの、単なるふやけた音のラレツに終わっても、どこのどのセンセも責任など取ってはくれぬ。怒りにまかせ他人様の感性など二度と当てにせぬとケツをまくったはいいが、シロウトの悲しさ、新譜リリース、旧譜復刻のコウズイの中でアップアップ。しかし基準設定のヒントをくれたのが、このオッサン。プロ野球の打者よろしく3割の打率なら合格とする。もう一つの条件は「文章自体が読んで30点程度のオモシロさ」であること。 ソーユー意味で、このオッサン決して読者を裏切らない。3割の打率維持が容易でないように、この世界で3割の的中率、3割のオモシロ率のクリヤが至難であることを申し添えておく。