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| 疾駆する草原の征服者―遼 西夏 金 元 中国の歴史 (08)
(
杉山 正明
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講談社による中国史の新シリーズの第8巻です。8世紀半ばの「安史の乱」から説き起こし、その後、9世紀後半におけるキタイの勃興から14世紀後半のクビライ王権崩壊まで、キタイ(遼)・西夏・金・元など、遊牧・狩猟民系権力の興亡と対中関係の500年に渉る歴史を射程に収めています。時間的にも空間的にもスケールは壮大です。特に気が付いた点は以下のとおりです。<BR> (1) 「セン淵の盟」に象徴される中華政権と異民族政権の並存状況に着目し、これを歴史の智恵に基づく国際的平和共存方式として高い評価を与えています。また、12世紀末頃の東アジアの状況を、一定の国際規範に裏打ちされた多国間システムとして捉え、その歴史的な意義付けを探ろうとしています。<BR> (2) キタイや金などの遊牧・狩猟系政権が諸民族の雑多な連合体であったことを指摘し、これら政権の性格について「民族政権」的側面よりも「帝国」的側面に注目しています。<BR> (3) モンゴルによるユーラシア制覇はその後の東西両洋の歴史に決定的なインパクトを及ぼしたとの立場から、特にフビライ朝の統治が「世界システム」の構築につながったことを、さまざまな事例を挙げて力説しています。<BR> (4) キタイの故地を調査した際のルポを収録しています。歴史と現在の交錯に思いを致すといった風情で、たいへん興味深いものを覚えました。<BR> 著者は高名なモンゴル史家であり、本書も徹底した「草原史観」に貫かれています。いつもながら斬新なアプローチで面白いのですが、ここまで明快に割り切って良いのかどうか、読者によっては違和感を覚える向きもあるかも知れません。
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